「プラスチック新法」に対応したらアメニティーが“ごっそり”盗まれた? 対応に右往左往する現場のリアル:瀧澤信秋「ホテルの深層」(1/5 ページ)
4月1日に施行された通称“プラスチック新法”。「ホテルの客室からアメニティーが無くなる!?」といったうわさがまことしやかに広がったが、実際はどうなのだろうか。ほぼ毎日ホテルに宿泊する筆者が現場を調査したところ……。
このところホテルのアメニティーが注目を浴びている。これまでもホテルファンの間では新製品や希少性といった観点からアメニティーが注目されることはあった。しかし今回は社会的なニュースとして拡散しており、かなり趣が違う。「ホテルの客室からアメニティーが無くなる!?」といったうわさがまことしやかに広がっているのだ――。
この点について、すでにSNSやWebニュース、テレビのワイドショーなど、多くのメディアからその真偽も含め情報発信されているテーマである。ここでは問題の概要と事実関係を簡単にまとめた上で、ホテルの深層という本連載テーマに沿い、一般メディアには取り上げられないようなホテル現場のリアルも含めレポートしていくことにする。
プラスチック新法とホテルの動き
問題の端緒は、4月1日に施行された通称“プラスチック新法”。正確には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」で、メディアでは「プラスチック資源循環促進法」とも略されている。
2019年、当時の小泉進次郎環境大臣の音頭取りで政府が策定したプラスチック資源循環戦略において、30年までに使い捨てプラスチックを累積で25%削減する目標が掲げられたことによるものだ。
ホテルでいえば、歯ブラシやカミソリ、ヘアブラシといった無償提供される(厳密には宿泊料金ら転嫁されていることは言うまでもない)プラスチック製品について、事業者へ使用量の削減を求めている。法律の詳細は割愛するが、あくまでも“削減を求めている”ものであり、提供の禁止や有償化が義務化されたわけではない。
とはいえ、ホテルが持ち合わせている公共性から、「環境問題に対して積極的に対応するのは当然」という空気がある。もとより、今回の法律に向けた一連の動きが始まる前から、環境コンシャスなコンセプトメイキングのホテルはあったし、アメニティーも自然素材などの代替素材を用いるホテルは見られた。
筆者の記憶でいえば、18年夏に某外資系ホテルへ宿泊した際、木の柄を用いた歯ブラシを目にしたことがあった。社会に役立っているというポジティブなイメージをPR手法のひとつとして集客に役立てられるのも、イメージを重視するホテルならではといえる。
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