木谷会長率いるブシロードが「初めて」に挑戦し続ける理由 日本企業はロイヤルカスタマーに優しすぎる:エンタメ業界を代表する「連続起業家」(1/4 ページ)
ブシロードを07年に創業し、今も多くのメガヒットコンテンツを現場で率いるのが、木谷高明会長だ。起業した会社を2度上場させている木谷会長は、エンタメ業界を代表する連続起業家である。常に挑戦し続ける理由を木谷会長に聞いた。
2022年1月より続いていた「まん延防止等重点措置」が約2カ月半ぶりに解除された。3回目のコロナワクチンの接種も進み、コロナ禍で制限されていたライブイベントをはじめ、様々な制約も解禁されつつある。
一方で、国内でも新型コロナウイルスの感染者が出始めた20年2月頃には、ライブイベントを実施するか否かで事業者の対応が分かれた。この中で、他社に先駆けて中止を決めた企業がある。ブシロードだ。
ブシロードは20年2月20日時点で3月末に開かれる予定だったイベント「AnimeJapan 2020」へのブース出展中止を決めたのを皮切りに、ライブイベントの中止・延期を打ち出した。その後、続々と多くのライブイベントが中止になっていったことを考えると、この決断は「英断」ともいえる。
その後、1回目の緊急事態宣言が明けた20年8月、富士急ハイランド・コニファーフォレストで他のアーティストに先駆けて屋外ライブイベントを再開した。ライブイベントの開催延期や中止が続く中、再開の先陣を切る「突破口」として口火を切る。感染防止の対策を徹底しながら実施したイベントではクラスター感染も発生せず、その後のライブイベント開催のモデルケースとなった。
このブシロードを07年に創業し、今も多くのメガヒットコンテンツを現場で率いるのが、木谷高明会長(61)だ。木谷会長はブシロード立ち上げ以前にも、アニメショップチェーン「ゲーマーズ」を経営していたブロッコリー社を1994年に創業し、2001年にはJASDAQへの上場も果たしている。ブシロードも19年に東証マザーズに上場しており、起業した会社を2度上場させている木谷会長は、エンタメ業界を代表する「連続起業家」だ。
コロナ禍という前例のない非日常下で、なぜ他社に先駆けて決断し、実践できたのか。常に挑戦し続ける理由を木谷会長に聞いた。
木谷高明(きだに たかあき) ブシロード会長。1960年石川県生まれ。武蔵大学経済学部を卒業後、山一證券株式会社を経て、94年にブロッコリーを設立。2001年にJASDAQ上場を果たす。07年株式会社ブシロードを設立。12年には新日本プロレスリングを子会社化。14年8月からはBushiroad South East Asia Pte. Ltd.(現 Bushiroad International Pte. Ltd.)のCEOを兼任し、シンガポールに駐在した。17年10月にブシロードの社長の地位を辞して、当社デジタルコンテンツ事業及び広報宣伝を管掌する取締役、ブシロードミュージック・パブリッシングの社長を兼任し、コンテンツ開発の最前線に立つ(現任)。20年2月にブシロードムーブの取締役会長を兼任、2020年6月にブシロードの会長に就任(現任)。近著に『すべてのジャンルはマニアが潰す ~会社を2度上場させた規格外の哲学~』(ホビージャパン)
ライブイベントを自ら中止し、再開した
――木谷会長は他社に先駆けてライブイベントを中止し、そして口火を切る形で再開しました。クラスター感染を発生させず、コロナ禍のライブやイベントのモデルを作ったといえると思いますが、なぜあのような決断ができたのでしょうか。
新型コロナウイルスは、当初は未知のものでした。だから、未知のものに対しては単純に恐れるべきだと考えました。それで真っ先にライブイベントの中止を決断しました。
その後に国内でも感染者数が増えてきました。その過程で、高齢者や基礎疾患者以外はそれほど恐れなくてもいいことが分かってきました。
また、当初はマスクやアルコールなどの消毒用品が手に入りづらい状況が続いていました。ただ徐々に生産が追い付き、誰もが万全な対策を取れるようになってきました。それで、20年8月末に富士急ハイランド・コニファーフォレストの野外でライブを再開しようと決断しました。
――その後も21年1月から再び断続的に緊急事態宣言に入りました、22年1月から3月21日の期間にも、まん延防止等重点措置が施行されていました。昨今のライブイベント開催をどのように見ていますか。
これまでライブイベントにおいては、幸いにしてクラスターの発生源にはなっておらず、今は対策さえしていれば、全く問題ないと思っています。かつては当局も5000人の上限枠や会場定員の半分などの制限をしていましたが、現在では事前に感染防止に関する計画を都道府県に提出して発声なしのイベントであれば、上限いっぱいでも実施できるようになっています。
ですから、今はもうやるしかないと考えていますね。
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