累計270万個を突破! 消しカスを集める「マ磁ケシ」の開発秘話を聞いた:週末に「へえ」な話(2/3 ページ)
消しゴムのカスを磁石で集めることができる「マ磁ケシ」が売れている。2021年10月に販売したところ、ネット上で話題になって、「文房具屋さん大賞」の機能賞も受賞した。それにしても、ちょっと変わったこの消しゴムは、どのようにして開発したのだろうか。
初代の課題を解決
さて、ここまで読んでいて、数年前の記憶がよみがえった人もいるのではないだろうか。クツワは2018年に、磁力で消しカスを集めることができる「磁ケシ」(308円)を販売していて、今回のマ磁ケシはその“進化系”ともいえるのだ。
磁ケシのことをよく知らない人のために、商品のことを簡単に説明しよう。磁ケシにも鉄粉が入っていて、ケースの底にネオジウム磁石を内蔵している。それを消しカスに近づけると、ススーっと集めることができるのだ。
ここまでの機能は、進化版のマ磁ケシと同じ。当時、このような消しゴムがなかったので、「スゴい。便利すぎる」「こーいうのがほしかったんだ」といった声が広がって、シリーズの出荷累計は270万個を超えるヒット商品に。が、しかしである。
消しカスをつけたままゴミ箱まで持っていって、カスを落とすか、机の上にティッシュなどを広げて、そこに落とす必要があったのだ。このことに不満を感じる人が多く、ネット上で「なんとかしてくれ」「逆に不便」といったコメントがでてきて、同社は「それならば、消しゴムの中にカスを回収することができる商品をつくればいいのでは」と考え、開発を進めることにしたのだ。
完成品は磁石が上下に動くようになっているが、試作品では回転しながら上下に動くようになっていた。「なぜ、わざわざ複雑なモノをつくったの?」と思われたかもしれないが、この技術は一部のスタンプなどで使われていて、それを応用しようと考えていたのだ。ちょっとした仕掛けが施されているので、完成すれば、文具ファンにとってはたまらないアイテムになっただろう。
しかし、ここで問題が出てくる。完成品のサイズと比べて、1.5倍も大きかったのだ。このサイズで販売しても、多くの小学1年生が購入するマグネット式の筆箱に入らないことが分かってきた。これではいけないということで、上下に動くいまの構造を取り入れることにした。
できるだけコンパクトにしたいわけだが、サイズの問題を解決することは難しかった。磁力をオフにするには、どうしても“距離”が必要になってくる。磁石を近づければオンになってしまうので、キャップの中にカスをためることができなくなる。離せば保管庫の役割を果たすことができるが、離せば離すほどサイズが大きくなってしまう。
消しカスがきちんと落ちて、筆箱の中に入るサイズにしなければいけない。開発チームの間で「もう少し離して」「いやいや、もうちょっとだけ近づけて」といった会話を何度も交わして、ようやく商品が完成したのだ。
関連記事
- ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - なぜ「時速5キロの乗り物」をつくったのか 動かしてみて、分かってきたこと
時速5キロで走行する乗り物「iino(イイノ)」をご存じだろうか。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」が開発したところ、全国各地を「のろのろ」と動いているのだ。2月、神戸市の三宮で実証実験を行ったところ、どんなことが分かってきたのだろうか。 - CDが苦戦しているのに、なぜ曲を取り込む「ラクレコ」は売れているのか
CD市場が苦戦している。売り上げが減少しているわけだが、CDをスマホに取り込むアイテムが登場し、人気を集めている。商品名は「ラクレコ」(バッファロー)。なぜ売れているのか調べたところ、3つの要因があって……。 - キユーピーの「ゆでたまご」が、なぜ“倍々ゲーム”のように売れているのか
キユーピーが販売している「そのままパクっと食べられる ゆでたまご」が売れている。食べことも、見たことも、聞いたこともない人が多いかもしれないが、データを見る限り、消費者から人気を集めているのだ。なぜ売れているのかというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.