なぜ高級車はFRレイアウトなのか? その独特の乗り味とは:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
マツダがFRの新しいラージ群プラットフォームを採用したSUV、CX-60を発表した。「時代に逆行している」という意見と共に、登場を歓迎するコメントも少なくなく、セダンに対する期待も溢れている。では、今回のポイントの1つであるFRとはいったい何なのだろうか?
FFのポテンシャルに限界も
横置きFFの場合、エンジンと平行に変速機が備わり、ディファレンシャルギアを介してドライブシャフトを回し、フロントタイヤを駆動する。この仕組みには、ちょっとした悪癖も存在する。そこには進行方向を軸とする力の伝達はなく、全ては車体横向きの車軸方向、すなわちピッチング方向の力だからだ。
発進時、エンジンの力は変速機によって回転数と引き換えに駆動力を高めて、車体を動かし加速させるのだが、動こうとする時や加速する時には、タイヤが地面を蹴るのとは逆向きの反力が発生する。これは駆動力と釣り合う力ではなく、発進時の抵抗と釣り合うものだ。
従って反力は動き出す瞬間が最も大きく、車速が上昇していくほどに加速度が小さくなり反力も減少していく。そして定速走行に移り、慣性力も手伝って反力は極めて小さくなる。反力がゼロになるのは、加速も減速もしないパーシャルな領域から走行抵抗分だけ減速される一瞬の領域だけで、減速中はエンジンの反対方向に反力がかかることになる。
例えば加速途中にアクセルを戻してしまうと、クルマは結構な衝撃を伝えてくることがある。それはエンジンブレーキがかかる(ATではそれほど大きくない)だけでなく、反力が逆向きになるからだ。
ちなみにATのトルクコンバーターは、そういう衝撃すら吸収してくれるから、滑らかな走りを実現するためにはトルコンは欠かせないデバイスだ。
それでも大きな反力には耐える構造と吸収できる仕組みを備える必要がある。そこでエンジンマウントを工夫して、トルクロッドにより前後方向の反力から支えていくことになる。
関連記事
- 高くなるクルマ コスト高は本体価格だけではない
この20年、サラリーマンの給料が上がらないといわれているにもかかわらず、クルマの価格は上昇していく一方だ。軽自動車でも200万円が当たり前の時代。クルマを買い替えよう、あるいは新たに購入しようと思った時、感じたことはないだろうか「クルマって高くなったなぁ」と。 - なぜクルマのボディはスチール製なのか 軽量化に向けて樹脂化が進まない理由
高級車などは、そのプレミアム性のためや、大型サイズゆえ重くなりがちな車重を軽減するためにアルミ合金やCFRPを併用することも増えているが、構造材としてむしろ鉄は見直されつつあるのだ。 - なぜクルマのホイールは大径化していくのか インチアップのメリットとホイールのミライ
振り返ればこれまでの30年間、全体的にクルマのホイール径はサイズアップされる傾向にあった。そのきっかけとなったのは、低扁平率なタイヤの登場だった。なぜタイヤは低扁平化し、ホイールは大径化するのだろうか? - ガソリンには、なぜハイオクとレギュラーがある?
どうしてガソリンにはハイオクとレギュラーが用意されているのか、ご存知だろうか? 当初は輸入車のためだったハイオクガソリンが、クルマ好きに支持されて国産車にも使われるようになり、やがて無鉛ハイオクガソリンが全国に普及したことから、今度は自動車メーカーがその環境を利用したのである。 - シフトレバーの「N」はなぜある? エンジン車の憂うつと変速機のミライ
シフトレバーのNレンジはどういった時に必要となるのか。信号待ちではNレンジにシフトするのか、Dレンジのままがいいのか、という論争もかつては存在した。その謎を考察する。 - 高速道路の最高速度が120キロなのに、それ以上にクルマのスピードが出る理由
国産車は取り決めで時速180キロでスピードリミッターが働くようになっている。しかし最近引き上げられたとはいえ、それでも日本の高速道路の最高速度は時速120キロが上限だ。どうしてスピードリミッターの作動は180キロなのだろうか? そう思うドライバーは少なくないようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.