九州と北海道 2つの高級クルーズ列車は、リピーターを獲得できるのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/10 ページ)
高級クルーズトレインの先駆者「ななつ星in九州」と北海道を巡る「THE ROYAL EXPRESS 〜HOKKAIDO CRUISE TRAIN〜」に新コースが設定された。どちらも国内観光需要の盛り上がりに向けた対応だ。しかし定員を減らして三密を避けつつ、運行とサービスを維持するには顧客単価を上げる必要がある。
もはや北海道のプライド「THE ROYAL EXPRESS 〜HOKKAIDO CRUISE TRAIN〜」
東急は17年から横浜〜伊豆急下田間で高級クルーズ列車「THE ROYAL EXPRESS」を運行している。伊豆急行の展望車両「リゾート21」を改造した車両だ。
内外装は「ななつ星in九州」を担当した水戸岡鋭治氏が手がけた。木材など天然素材を使った心地良い空間というコンセプトだ。ただし日中利用を前提にしているため個室はなく、全体的に開放感がある。リゾートホテルのロビーという印象だ。
8両編成で、構成は1号車に展望席とお子さま用の遊び場、3号車にマルチカー(イベントなど多目的室)、4号車にキッチン、5号車と6号車はダイニングカー、8号車に書斎風ライブラリー。1号車、2号車、7号車、8号車は向かい合わせ2〜6人用座席になっている。
座席数としては定員100名となり、観光列車としては大規模だ。しかしすべての座席を埋めるわけではない。ツアーは最大15組で募集されており、30〜50名程度で利用する。リビング、ダイニング、ライブラリーなどは共用の空間になる。
3号車「マルチルーム」はイベントなど多目的に使える。化粧品メーカーの新製品発表会で使われたこともある。今回の北海道クルーズ発表会もここで行われた。椅子は取り外し可能で、床にチェーンでつながれている(この車両はHOKKAIDO CRUISEには連結されない)
横浜〜伊豆急下田間の乗車時間は約3時間半。ツアーはこの区間の食事付き乗車プランと、伊豆の宿泊観光、一部にJR東日本のサフィール踊り子を組み合わせたクルーズプランがある。
「THE ROYAL EXPRESS」は、横浜と伊豆観光を結ぶ架け橋だ。そして、自社の沿線に観光地を持たない東急電鉄にとって、観光地にある子会社の伊豆急行を結ぶ。沿線価値を高めるための戦略的な列車ともいえる。
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