「バイトテロ」ならぬ「上層部テロ」で炎上の吉野家、それでも株価は上がり続けるワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
吉野家では「バイトテロ」から一歩進んで、「上層部テロ」が脅威となっているようだ。しかし、吉野家は複数の炎上を経ても株価が下落するどころか、むしろ上がっているのだ。
吉野家では「バイトテロ」から一歩進んで、「上層部テロ」が脅威となっているようだ。
大手牛丼チェーンを展開する吉野家は、18日に同社の常務取締役が早稲田大学の講義で不適切な発言をしたとして謝罪に追い込まれた。「生娘をシャブ漬け戦略」と紹介された手法は、いわゆる「刷り込み(インプリンティング)戦略」というもので、マクドナルドをはじめとした飲食店の長期的な成長戦略を語るうえでは必要不可欠なほど一般的なものである。
要は「雛鳥が最初に目にした生き物を親だと認識する」ように、初めて覚えた味が好きな味になるという現象を「生娘」「シャブ(覚醒剤)」という言葉にあらわしたものと考えられるが、その言葉選びは適切な時代観を捉えたものとは言い難い。
思い返せば、先月も吉野家は炎上していた。
3月には吉野家の「名前入りオリジナル丼」プレゼント企画に際して、お客様相談室長が高圧的な対応を取っただけでなく、キャンペーン実施時と異なる名入れの条件を追加したことで大炎上し、謝罪に追い込まれたばかりだ。
同社で炎上したのはいずれも「常務取締役経営企画部長」「お客様相談室長」といった立派な肩書きを有する人物だ。逆にアルバイトが起こした不適切な事例は、約15年前の2007年を最後に大炎上となった例はなさそうだ。
不祥事の与えるブランドイメージ毀損(きそん)リスクは、正規雇用ではないアルバイトよりも正規の構成員の方が大きい。それが役員や室長といった上層部によるものだとすれば、以下全員が同一視されてもおかしくはなく、決して無視できない悪影響となり得るだろう。
しかし、吉野家を展開する吉野家ホールディングス(HD)は、2度の炎上を経て、株価が下落するどころか、むしろ上がっているのだ。
吉野家HDにおける3月24日の謝罪から4月18日の謝罪までの株価推移を追うと、2282円から2413円と5.7%ほど上昇している。同じ期間に日経平均株価が2万8110円から2万6799円まで4.6%下落していることから考えると、見た目以上に吉野家は“評価”されているといえそうだ。
それではなぜ、炎上しても吉野家の株価は下落しないのだろうか。
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