マッカーサーも常連だった!? 88歳「ビヤホールライオン 銀座七丁目店」の伝説:週末に「へえ」な話(2/4 ページ)
東京・銀座にあるビヤホールが「登録有形文化財」として登録されたことをご存じだろうか。「ビヤホールライオン 銀座七丁目」の建物のことである。この店は1934年にオープンしていて、ホールはほぼ当時のまま。店内はどうなっているのかというと……。
壁画の完成に3年
店内に足を踏み入れると、どーんと目に入ってくるモノがある。正面にあるガラスモザイク壁画だ。ビールの原料「大麦」を収穫している女性が描かれているわけだが、なぜか「ひとこと」言いたくなる。女性たちはギリシャ神話に出てきそうなデザインの服を身にまとっていることもあって、西洋人のようにも見える。しかし、左の端にいる子どもの髪型はおかっぱなので、日本人のようにも見える。
海外なのか、それとも日本なのか。場所がよく分からないので、そのヒント探るために、じっくり見ていると、背後に煙突が描かれているではないか。この煙突の正体を確かめるために、サッポロライオンで広報を務めている青山佳子さんに聞いたところ、「正確なことは分かっていないのですが、当時、東京の恵比寿にあった当社のビール工場なのかもしれません」とのこと。古い話なので「かもしれません」と断言できないわけだが、この壁画を完成させるにいたった期間は記録が残っている。約3年だ。
じっくり見ると、大麦以外にも葡萄(ぶどう)が実っていて、アカンサスの花が描かれている。原画を担当したのは、ビルを設計した菅原栄蔵で、タイル画の制作は、ガラス工芸家の大塚喜蔵によるもの。2人がタッグを組んでつくりあげたそうだが、それにしても3年は長い。いまの時代であれば、「もっとスピードを上げろ! 効率重視だ!」と誰かから怒られそうだが、何もダラダラ仕事をしていたわけではない。
店内にはこの大壁画以外にも、ガラスモザイク壁画が計10点ある。これらの壁画を制作するにあたって、400色ほど使っているのだ。ふむふむ。遠くから見ても「きれいだなあ」と感じられるわけだが、その秘密は数にあったようである。近づいてじっくり見ると、タイル1つ1つの色が違っていて、その組み合わせによって、全体の美しさを演出している。
「ま、こんな細かい作業をしていたら、時間がかかっても仕方がないよな」とひとり合点していたわけだが、それは大きな間違いだったのだ。「400色は選ばれた色でして、実は4万6000色のタイルをつくっていたそうです」(青山さん)
ケタが2つも違っていたのだ。「この色はちょっと違うな。じゃ、こっちの色で」といった感じで、2つ、3つの中から選んでペタペタ貼っていったわけではない。「4万6000÷400=115」なので、「このタイルにしよう」と決めるのに、単純計算で115枚の中から選んでいるのだ。「こだわりにこだわり抜いた」といった話ではなく、気が遠くなるような作業をしていたようである。
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