タブー視されがちな「解雇無効時の金銭解決ルール」 働き手にとってもメリットがありそうなワケ:厚労省でも検討開始(2/4 ページ)
これまで立場の弱いとされる働き手を保護する観点から、なかなか整備が進まなかった「解雇の金銭解決」。ここに来て厚労省で整備の動きが出てきている。タブー視されがちな制度がなぜ、今?
縦軸を「会社に対する社員の思い」、横軸を「社員に対する会社の思い」として、社員パターンを4つに分類したのが以下の図です。
「会社にいたい」かつ「会社に必要とされている」をAタイプ社員とすると、Aタイプ社員と会社は相思相愛です。この場合、そもそも会社は社員との雇用契約を解除したいとは思いません。つまり、Aタイプ社員は、解雇の対象外です。
一方、「会社にいたい」かつ「会社に必要とされていない」というかけ合わせのBタイプ社員の場合、会社と社員の思いは一致しません。社員側の一方的な片思いです。会社としては、必要としないBタイプ社員との雇用契約を解除したいと考えます。しかし、Bタイプ社員が早期退職に応募するとは考えにくく、雇用契約を解除するために解雇も視野に入れると、金銭解決ルールがあった方が対処しやすくなります。それに対し、会社に在籍し続けたいBタイプ社員にとっては金銭解決ルールは受け入れがたいものです。
「会社にいたくない」かつ「会社に必要とされている」というCタイプ社員の場合、今度は会社側の片思いです。会社側から雇用契約解除を申し出ることはなく、Aタイプ社員と同じく対象外です。一方、Cタイプ社員は転職活動して次の行き先を決め、自ら雇用契約解除を申し出る可能性があります。会社としては、Cタイプ社員の引き留めに取り組むことになります。
最後の「会社にいたくない」かつ「会社に必要とされていない」というDタイプ社員は、会社と反目し合う関係です。在籍し続けることは会社にとっても社員にとっても不幸です。会社側が早期退職を募集すれば、Dタイプ社員は応募するかもしれません。しかし、1日も早く雇用契約を解除したいなどの思惑があれば解雇も視野に入ることになります。その場合、会社としては金銭解決ルールがあった方が対処しやすくなります。
以上から、それぞれのパターンごとに、会社側の視点で解雇無効時の金銭解決ルールの必要性を反映させたのが以下の図です。対象になるのはB・Dタイプの社員となります。
一方、社員側の視点で解雇無効時の金銭解決ルールの必要性を反映させると、以下図のようになります。
会社に在籍し続けたいBタイプ社員は、金銭解決ルールを望みません。しかし、会社にいたくないDタイプ社員の場合は、解雇無効時に得られる補償金の額次第なところがあります。補償金が裁判などで勝ち取れる解決金よりも高い相場で制定されるならメリットがあるからです。つまり、Dタイプ社員にとって、金銭解決ルールは少なくとも検討する余地はあり、タブーとまではいえません。
以上から、金銭解決ルールに明らかな抵抗感を持つのはBタイプ社員のみです。Bタイプ社員を解雇できない会社は、次の取り組みに努めなければなりません。
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