法改正でもまだまだ道半ば? 男性育休促進を阻む「エセ女性活躍推進」の正体:アンコンシャス・バイアスにご用心(1/4 ページ)
男性も育休を取得すべき――これまでは女性が取得するものど思われがちだった中、社会の変化や法改正もあり、徐々に高まる男性育休の機運。一方で、まだまだ道半ばともいえそうだ。その背景に「エセ女性活躍推進」があると筆者は指摘する。
かつて社会は、「男性は仕事、女性は家庭」という考え方が支配的でした。しかし今は、前回の記事「霞が関でも導入 民間企業がよく使う『若手の声を聞く作戦』に潜む欺瞞」でも指摘した通り、全世帯の3分の2が共働きで、男女間の賃金格差も縮小傾向です。
社会の流れは、「男性は仕事、女性は家庭」から「仕事も家庭も、男女協力」の時代へと移り変わろうとしています。男性の育児休業(育休)取得促進は、そんな時代の流れに沿う形で必然的に生じている施策です。
男性の育休取得は、育児・介護休業法が改正されたことで2022年4月から段階的に促進されることになりました。4月1日、テレビ朝日は「改正育児・介護休業法が施行 男性の育休取得UPへ」と題したニュースでその旨を報じています。
ニュースで紹介した会社は、育休取得者に祝い金を贈るなど独自の制度を設けて育休取得を積極推進しています。男性の育休取得率は5割を超えているとのこと。しかしながら、そのような事例はまだ“まれ”です。
厚生労働省が公表している「令和2年度雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は12.65%で、女性は81.6%です。ほとんどの男性が育休を取得していない一方で、ほとんどの女性が育休を取得していることになります。
なぜ男性と女性の間に、これだけ顕著な育休取得率の差が生まれてしまうのでしょうか。さまざまな要因が考えられますが、私生活面と職場環境面の大きく2つに分けて理由を見てみましょう。
育休取得に男女差が生まれやすいワケ
まず、私生活面ですが、産前産後は母体を守る必要があるため、女性は産休を取得することになります。特に産後については、8週間が原則就業禁止とされ、うち6週間は強制休業とすることが労働基準法第65条で定められています。女性は産後休業を経て、そのまま自然と育休に移りやすいといえるでしょう。
次に、女性の方が男性より相対的に賃金が低く、多くの家庭では、男性が育休を取得した方が生活費の目減りが多くなることが挙げられます。「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、同年における一般労働者の月額賃金は、男性が「33万7200円」であるのに対し、女性は「25万3600円」で8万3600円の差があります。男性と女性のどちらかが休む場合、少しでも生活費を減らしたくないと考えれば、多くの家庭で女性が休んだ方がよいという判断になりそうです。
そして、今もまだ多くの家庭で根強く残っているのが性別役割分業です。
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