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軽トラが買い物難民を救う? コンビニとしのぎを削る移動販売「とくし丸」の挑戦都市圏でも増加傾向の買い物難民(1/3 ページ)

免許返納などで移動の足がなくなり、買い物難民と化す高齢者が増えている。そうした市場を突き成長を続けるのが移動販売型のスーパー「とくし丸」だ。

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 移動販売スーパー「とくし丸」という軽トラックが、今増えている。移動スーパーといえば、過疎地に住む高齢者向けサービスとして、自治体の補助をベースに行う公共サービスというイメージもあるが、とくし丸は、上場企業であるオイシックス・ラ・大地が事業として運営している。

 もともと、とくし丸の運営企業は徳島県発祥のベンチャーだったのだが、2016年にオイシックスの傘下に入った。オイシックスのIR資料によれば、21年末時点で、販売車948台が稼働していて、その稼働エリアは全国42都道府県にまで広がり、21年4〜12月の流通総額は168億円以上にまで拡大しているという。高齢化が進み、全国各地で「買い物難民」が増えつつあることが懸念されているわが国において、注目すべきニュービジネスだといっていいだろう。


出所:オイシックス・ラ・大地発表のプレスリリース

 このとくし丸の仕組みは、ざっくりいえば、運営するとくし丸、移動販売車を所有して販売を担当するドライバー、商品を供給する地域のスーパーマーケットの3者が連携することで成り立っている。ドライバーは地域スーパーの販売代行という位置付けとなり、在庫リスクの負担はなく、約400品目、1200点ほどの商品を積み込んで、要望のあったお客さんの玄関先に店を開き、自由に選んでももらって買い物してもらう形だ。定期的に来てくれることから、ドライバーとお客とのコミュニケーションが発生し、その要望を取り入れた品ぞろえに調整もされていく。近隣で買い物できる商店がなくなってしまった人にとっては、宅配と違って、店先で選ぶという買い物本来の楽しみもあるのだから、好評だというのも納得できる。

 気になるのは、これで採算が取れるのか、だが、ドライバーになる際には、移動販売車を購入するなどの初期投資(340万〜370万円)が必要になる。この初期投資に対して週6日稼働で平均日販6万円と想定すると、諸経費を引いて、月17.8万円が手元に残る計算になるという。


出所:とくし丸公式Webサイト

 会社としては日販8万円(月手取り26.9万円)を目標にドライバーの指導に当たっているというが、平均すると日販10万円程度(月手取り35.9万円)となっているようで、接客業が好きな人にとっては悪くない商売だといえよう。

 地域スーパー側は在庫リスクを負うものの、年間2400万円(8万円×25日×12カ月)が固定費なしに増収となるというのはありがたいようで、だからこそ、142社・743店舗(21年末時点)の契約店舗があり、かつ、その数が増え続けているのだろう。このように販売ドライバーと地域スーパーにとっての採算を確保できる仕組みを構築できたことで、とくし丸はこれからもさらに広がっていくことが予想される。こうした動きが、運転免許の返上などによって今も増え続けている買い物難民のサポートに寄与することが大いに期待されているのであろう。

 とくし丸が展開しているエリアは過疎地域だけではなく、近年は都市部でも広がってきているようだ。

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