連載
苦境の新電力、“ソシャゲ感覚”で撤退? 1年で14件、倒産過去最多: 古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
企業信用調査最大手の帝国データバンクが4月公表した「『新電力会社』倒産動向調査」によれば、2021年度における新電力の倒産は過去最多となる14件となった。倒産までいかなくとも、電力の小売事業から撤退を余儀なくされた事業者も含めると、その数は31社と過去最悪のペースとなる。
新電力の倒産・撤退は今後も増える見通し
3月31日には、「熊本電力」が電力供給の停止についてWebでアナウンスした。Webでは自身を「電力会社」と称しており、由緒正しそうな印象を受ける。
しかし、その実態は14年設立で資本金も2510万円の「新電力」だった。同社は21年の段階で電気代高騰に伴う顧客トラブルが発生していたようで、代表取締役が交代するといった事態に見舞われた。同社は今年の3月に経産省のWebページで「納付金を納付しない電気事業者」として名指しされていたが、そこからあえなく電力供給の停止に追い込まれた。
他にも、3月には上場企業である「ホープ」の子会社である新電力のホープエナジーが300億円の負債を抱えて破産するなど、大型の事案も発生している。それでもまだ倒産・撤退していない新電力は706社あり、これらの31社は氷山の一角にすぎない。帝国データバンクは「市場価格上昇に耐えきれない事業者の倒産が今後も発生する可能性が高い」としているなど、今後も新電力の倒産リスクは高いと考えられる。
それでは、仮に契約した新電力が倒産した場合、どのような影響があるのだろうか。
関連記事
- 3.11上回る25倍の電気代高騰、“市場連動契約"の落とし穴
新電力の「市場連動型契約」に加入した世帯で電気料金が急増。ハチドリ電力では、電力価格の異常高騰分に関してはハチドリ電力側が肩代わりして負担し、ダイレクトパワーでは料金の割引に直接言及しなかったかわりに、2000円の解約手数料を無料とし、自社から顧客を切り替えるよう促している。 - ロシアのルーブル安を笑えない? 日本円もひっそりと「大暴落中」のナゼ
ロシアがウクライナを侵攻し始めてから、同国通貨単位である「ロシアルーブル」は対円相場で18%暴落した。しかし、ルーブルが対岸の火事になっていると認識するのは早計だ。このところ日本円も大幅に円安、つまり暴落しているのだ。 - 原油価格が史上最速ペースの値上がり 「第三次オイルショック勃発」の可能性も
原油価格が歴史上類を見ないスピードで値上がりしている。2020年にはマイナス価格になったこともあるNY原油先物が、22年の初めには75〜80ドル近辺まで値上がりした。そして3月に入ると、年初からさらに4割も暴騰し、一時は1バレル=112ドルを突破したのだ。 - トンガの「大噴火」が、パンやパスタの値上げをもたらす? 過去の冷夏を振り返る
トンガの大噴火は、パンやパスタといった生活必需品の価格にも少なからず影響をもたらしてくることになるかもしれない。1月14日、南太平洋にある島国のトンガで発生した大規模な噴火の噴煙は、高度20キロメートルにまで達したという。宇宙からもはっきりと見えたその噴煙によって、今後懸念されるのが“冷夏”だ。 - 賃金減少、日本の家計に世界的なインフレが直撃、「悪い円安」も追い討ち?
世界的なインフレの影響が、日本の家計に大きな打撃を与える可能性がある。需要によらない供給側の要因で起こる物価上昇は「コストプッシュインフレ」、通称「悪いインフレ」と呼ばれている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.