苦境の新電力、“ソシャゲ感覚”で撤退? 1年で14件、倒産過去最多: 古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
企業信用調査最大手の帝国データバンクが4月公表した「『新電力会社』倒産動向調査」によれば、2021年度における新電力の倒産は過去最多となる14件となった。倒産までいかなくとも、電力の小売事業から撤退を余儀なくされた事業者も含めると、その数は31社と過去最悪のペースとなる。
新電力が倒産しても電気は使える
新電力について規定した改正電気事業法によれば、東京電力や関西電力といった発電所を持つ伝統的な電力会社である「一般送配電事業者」または、東京電力エナジーパートナーのような小売部門の事業者が、自動的に電気を供給する仕組みとなっている。そのため、ただちに自社や自宅だけが停電するわけではない。
しかし、契約中の新電力が倒産したり、事業から撤退するという通知が届いたりした場合は必ず中身を確認しておかなければならない。その通知の中に、新たな電力会社への手続き案内が同梱されている。通知に記載された一定の期間内に新しい電力会社へ切り替え手続きを行わなければ今度こそ電気が止まってしまう可能性がある。
もちろん、通知を受け取る前でも切り替え手続きを進めることはできる。撤退や電力供給停止の可能性が少しでもある場合は早めに切り替え手続きを行うことが賢明だろう。
今回は新電力についてピックアップしたが、4月からは宮城で全国初の上水道民営化がスタートするなど、「水」インフラへの民間企業参入が始まっている。
インフラは公共性の高い事業であることもあり、民間企業の根源的な理念である「利潤の追求」とは逆行する場面も数多く生まれる。水や電気に求められる安定性が担保されるかについて、政府や県だけでなく我々も目を光らせておかなければならない。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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