レクサスLXで分かったGA-Fプラットフォームの構造:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
レクサスLXとは、要するにトヨタランドクルーザーのレクサス版である。プラットフォームはGA-Fと呼ばれるTNGA世代のラダーフレームであり、ランドクルーザーおよび北米向けのタンドラと共用する。今回のポイントはこのフレームである。
ホイールベース拡大の可能性
さて、最後に商品として見てどうかという話だが、ここが少し難しい。トヨタ内部はもちろん自動車好きにとって、ランドクルーザーというクルマはある意味神格化されている部分がある。ホイールベース2850ミリ、最大渡河性能700ミリ、アプローチアングル22.6度、デパーチャーアングル21.7度、ランブレークオーバーアングル25.9〜28度などの限界性能を決める要素は、絶対に譲らないことが不文律になっている。
しかしながら、レクサスLXはグレードによっては1800万円のプライスタグを下げるプレミアムカー、もっと下世話にいえばアラブの王様が乗るようなクルマである。リヤシートの素材やデザインはそれに相応しいとしても、それ以前の問題として絶対的なスペースがそういうトップレンジのセレブリティに相応しいかというとやはり狭いのではないかと思う。なんていうこと自体不敬であると怒られるかもしれないが、そういうタブーは設定しない方が良い。
GA-Fプラットフォームとランクル譲りのコンポーネントを持ってすれば、大胆に200ミリホイールベースが伸ばしたとて、変わるのは概ねランブレークオーバーアングルだけで、超絶的悪路走破性を備えることに変わりはない。ボディ全長の話を別にすれば、下腹を打つほどの岩山をよじ登るような場面で、わずかに不利になるだけだ。だとすれば、レクサスLXを選ぶセレブはおそらく広いスペースを喜ぶのではないか。
ランクルより少しでも走りが劣ることを許さないというわけではないと思う。もしどうしてもランクル並みにせよという大金持ちがいるのであれば、あと2000万円もらって、ショートホイールベーススペシャルをワンオフで作るなり、車高調整の可動域を更に増やせばいいのではないか? そこまでお金が無い人は大人しくランクルを買えばいい。要するに、限界性能を求め、かつラグジュアリーも求め、しかしワンオフは無理という人は結構少ないことが予想される。
そしてレクサスLXの多くの顧客は、リヤスペースを拡大したら喜ぶと思う。むしろ今まで狭さに抵抗があった新たな顧客層を開拓し、LXがランクルとは全く違うということをより明確に打ち出せると思うのだが。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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