DeNAはなぜ「退職者」を新卒採用イベントに登壇させるのか:「起業志望者」も採用する理由(1/4 ページ)
「退職」――この言葉はどちらかというとネガティブに受け取られがちなものだろう。しかし、退職者をあえて採用イベントに呼んで、語ってもらうという風変わりな企業がある。DeNAだ。
「退職」――この言葉はどちらかというとネガティブに受け取られがちなものだろう。しかし、退職者をあえて採用イベントに呼んで、語ってもらうという風変わりな企業がある。DeNAだ。
退職者をイベントに呼ぶなどすれば、退職をキャリアプランとして見据える人が入社して定着率が悪くなり、企業にとってはマイナスにならないのだろうか。なぜ、わざわざ退職者を登壇させるのか。
その答えを得るべく、DeNAが考える退職者への見方や人材に対する考え方、また採用へのスタンスについて、DeNAの小川篤史氏(ヒューマンリソース本部 人材企画統括部 新卒部 部長)に話を聞いた。
「いずれは離職して起業したい」人の入社を、なぜ歓迎するのか?
DeNAと聞くと、どのようなことが思い浮かぶだろうか。多くの人は、リクルートと並んで「多種多様な事業を展開している」「巣立った人が新事業で起業している」というイメージを持つことだろう。
オークションサイト運営から始まったDeNAはその後、携帯向けゲーム、携帯向けショッピングサイトなどさまざまな事業を開発・運営してきた。今ではスポーツやヘルスケア領域にまで事業領域を拡大している。
小川氏は「世の中にDelightを届けることが企業のミッション」だと説明する。Delightとは直訳すれば「喜び」のことだが、DeNAにおいてはミッションに含まれているキーワードだ。
“Delightを届ける”対象は、世の中全体だけでなく、社員や採用活動を通じて接点を持った人も含まれる。「世の中が変化すれば人も変わり、求められるDelightも変わる。当社が持続していくためでもあるが、人を重視しているので、多種多様なDelightを届けられるよう、事業領域も拡大している」と小川氏は説明する。
「卒業生(DeNA退職者)は、Delightを届けたいという遺伝子を受け継いでいるので、彼らもDeNA GALAXYを構成する人、星座のようにつながっている人だという考えを持っている」(小川氏)
そのことからDeNAでは、社員のキャリアパスを大きく3つに分けて捉えているという。事業リーダーまたは経営にかかわる人、スペシャリストになる人、そしてDeNAから独立して起業したり巣立ってベンチャーにジョインしたりする人だ。
「そもそも当社では独立・起業を応援しているだけでなく、Delight Ventures(デライト・ベンチャーズ。ベンチャーキャピタル)を立ち上げ、社内の人が独立しやすいプログラムを作っている」と小川氏。「卒業して起業している人のことを、当社の推奨するキャリアを歩んでいる人、と社内ではポジティブに捉えている」と説明した。
そのような卒業生に登壇してもらうことで、後々独立して起業するキャリアを思い描いている志望者に対し、「DeNAという会社での経験が独立後にどのように生きてくるか」をリアリティーを持って伝えられる。
入社しても、起業のために辞めてしまうのでは定着率が下がり、会社にとってマイナスでは? との問いについて小山川氏は「いずれ起業したいという意思のある人は、当社でも事業を率いる人材になってくれる」との見方を示した。
「退職することをポジティブに捉える企業文化がある上、独立を一つのキャリアパスとして推奨している。出戻りも自由なため、『いずれは退職して起業しよう』と考える人の採用を見送るという方針は、当社では持っていない」(広報部)
退職者をイベントに呼ぶのは、DeNAという箱の中にとどまるのではなく、やがて出て行きDelightを世の中に広く届けるDeNA GALAXYを広げていく人材も採用したいという意図があるのだ。
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