なぜ吉野家は「炎上3連チャン」をやらかしたのか わずか1カ月半の間に:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
お客様相談室長、常務取締役、採用担当者――。吉野家の炎上が止まらない。わずか1カ月半の間に、なぜ「3連チャン」をやらかしたのか。その背景に何があるのかというと……。
「急速な効率化」が影響
さて、この吉野家炎上3連チャンについては、既に多くのメディアや専門家が取り上げており、経営者が悪いとか、企業カルチャーに問題があるのでは、などと原因についてさまざまな分析をされている。
それらを否定するつもりはまったくないのだが、これまで実際に吉野家のような炎上企業の対応を手伝ってきた立場で言わせていただくと、「急速な効率化」の影響も大きいのではないかと考えている。
吉野家が、新型コロナの世界的流行という未曾有(みぞう)の危機を乗り越え、さらに業績も回復することができたのは「構造変化」を遂行したことが大きい。では、それは何かというと、吉野家ホールディングスの小澤典裕常務取締役はこうおっしゃっている。
『取り組みの具体的な内容を述べますと、まず当初のキャッシュ流出抑止として、投資を一旦全面的に凍結する一方、コストの見直しを聖域なく実施しました』(吉野家ホールディングス コーポレートレポート2021)
そして特筆すべきは、「聖域なきコスト見直し」はこの時期だけで終わりでなく、今後も継続されていくということだ。コーポレートレポートでも2021年から、『グループ全体で70億円のコスト効率化ができる体質(損益分岐点の引き下げ)となり、今後の業績への期待できる状況』(同上)だと説明している。
22年に入ると、このコスト効率化路線はさらに強化されていく。「生娘をシャブ漬け戦略」炎上の3日前に公表された「新3ヶ年グループ中期経営計画」でも、「基本方針」の一番上に「投下資本効率の向上」という文字があり、ROIC(投下資本利益率)も21年度は1.7%だったが、24年度にはなんと一気に5%まで引き上げていくという攻めの計画を掲げている。
ここまでいけば、筆者が何を言わんとしているのかお分かりいただけたのではないか。コロナ禍からこの2年、吉野家は「聖域なきコスト効率化」を進めてきた。それ自体はちっとも悪いことではないし、実際に業績も回復している。
ただ、「効率化」の名のもとに人員や予算が減らされることになれば当然、現場の働きぶりは影響を受ける。最初のうちは「改革だ」「有事対応だ」と気合いで乗り切れるが、2年も経過すれば“効率化疲れ”が引き起こす問題もでてくるだろう。それが相次いで表面化しているのが、「炎上3連チャン」ではなかったか。
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