ソフトバンクG1.7兆円の最終赤字 孫正義氏「手元に現金を厚く持つ」戦略とは:投資は「エコシステム」(3/4 ページ)
ソフトバンクグループは5月12日に、2022年3月期の連結決算を発表した。最終損失は1兆7080億円で、過去最大の赤字となった。同社の前期業績は過去最高で、国内最大の純利益(4兆9879億円)を記録していたが、1年で大きく赤字へと転じた。
投資は「エコシステム」で実施
LTVの改善方法について、孫会長兼社長は「投資を行っていないわけではありません」と説明。ただし、保持していた資産の売却金額(21年度で5.6兆円)が、投資資金(5.2兆円)を上回るように運用した。
「新規の投資は、回収した資金で賄う。この“エコシステム”が回り始めています。売却するのはほとんど上場株です。一方、新たに投資するのはほとんどが未上場株。ビジョンファンドで新たに未上場株に投資をし、それが上場してしばらくして適切な時期に徐々に売却する。その資金を未上場株に投資する、というエコシステムです」(孫会長兼社長)
さらに孫会長兼社長は「世界の状況が混とんとしているので、守りを固め、現金を手元に厚く持つ方針です。一部売却した上場株の資金は、能天気に新たな投資に回すのではなく、現金を手元に積み上げています。また、一部の資金は自社株買いにも回しています」と続けた。
“攻め”はアーム 「攻めれば攻めるほど、現金が戻ってくる」
孫会長兼社長はここまでのプレゼンテーションを受けて「孫さんらしくない、ソフトバンクらしくない、そんなにしおらしくしていいのかと言われそうですが、“攻め”も忘れずにやっていきたいです」と話す。
その“攻め”に該当するのが、英アーム(ARM)の事業だ。ただし、アームに対しても「新たなお金はなるべく使わずに、今持っている持ち駒の中で攻めを進めていく」と話す。
アームの売上高の成長を説明した上で、「既に多くのメーカーと契約ができている。契約から出荷数を考えると、2年先、3年先までの業績が予想できますが、これから絶好調に伸びていく」「攻めれば攻めるほど、現金がどんどん戻ってくる会社といえます。SBGの今の状況を考えても(アームに期待をかけるのは)理にかなっています」(孫会長兼社長)とアピールした。
また、孫会長兼社長はアームの売却騒動を受けて「エヌビディアへの売却は、政府の許認可が下りなかった。むしろこれ幸いとして、アームのこれからの爆発的な成長をどうしたら果たせるかに、自分自身の頭脳・精力をかなり集中させています。(アームの株を)持っていてよかったとなるように頑張りたい。そうなると信じています」と意気込みを語った。
アームは現在、上場準備をしている。上場準備の障害であったアームチャイナのガバナンスも正常化に向かっていると状況を説明した。
関連記事
- 22年度新入社員に向けた、経営者の熱い言葉──トヨタ、ソフトバンク、ファミマなど
4月1日、多くの企業が入社式を行った。コロナ禍で迎える3回目の春。新入社員に向けて、各社の経営者は何を伝えたのか。 - 給与と労働時間、どちらを優先? 日立とパナソニックの「週休3日」は全く違う
連日「週休3日」が話題になっている。日立製作所とパナソニック ホールディングスが相次いで2022年度中の導入を検討していると発表したことがきっかけだ。しかし、日立とパナソニックの「週休3日」は全く異なるものだ。どういうことかというと……。 - ラーメン業界に黒船来航! 約90秒で「アツアツな本格ラーメン」を作る自販機がすごい
JR東京駅、羽田空港、首都高芝浦パーキングエリアで、ラーメン自販機「Yo-Kai Express」の設置が始まった。いったい、どんな自販機なのか? CEOが話す強みや戦略は? - 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──? - 格差が広がる日本 週休3日の“貴族”と、休みたくても休めない“労働者”
「週休3日」に注目が集まっている。大企業が相次いでこうした先進的な制度を導入する陰で、休みたくても休めない労働者の存在が置き去りにされている。日本の働き方改革は、どこへ向かうのだろうか──。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.