通信減収の携帯3社、法人と金融で増益 どうなる楽天?:房野麻子の「モバイルチェック」(1/2 ページ)
携帯電話各社は決算を発表した。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は、2022年3月期通期の決算だ。通信料金値下げの影響で減益も予想されたが、蓋を開けてみれば3社とも増益を達成した。そして新規参入の楽天は、モバイル事業の先行投資により大幅な赤字拡大となっている。携帯4社の状況を見ていこう。
携帯電話各社は決算を発表した。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は、2022年3月期通期の決算だ。通信料金値下げの影響で減益も予想されたが、蓋を開けてみれば3社とも増益を達成した。そして新規参入の楽天は、モバイル事業の先行投資により大幅な赤字拡大となっている。携帯4社の状況を見ていこう。
ドコモは売上高が前年比0.2%減の5兆8702億円、営業利益は前年度比1.2%増の1兆725億円の減収増益。KDDIは売上高が前年度比2.5%増の5兆4467億円、営業利益は前年度比2.2%増の1兆606億円の増収増益。ソフトバンクは売上高が前年度比9.3%増の5兆6906億円、営業利益は前年度比1.5%増の9857億円の増収増益となった。
通信の減収をカバーする法人向けと金融
もちろん、料金値下げの影響は小さくない。KDDIが872億円、ソフトバンクは770億円の減収要因。ドコモの場合は20年3月期から22年3月期までのモバイル通信サービスの減収額が2700億円になるなど、非常に大きい。それをカバーしたのは法人事業と、Eコマース、そして金融などのライフスタイル事業だ。
特に、今後の戦略で3社が共通して注力していくと語ったのが法人事業だ。ドコモは、法人事業に強いNTTコミュニケーションズを子会社化したことで、営業体制を統合し、大企業から中小企業までワンストップでサービスを提供。モバイルやクラウドのソリューションを強化することで収益拡大を狙う。
KDDIは、企業のDXを支える開発体制を強化するために、新たに中間持株会社「KDDI Digital Divergence Holdings」を設立。足りない領域はM&Aも検討するという。
ソフトバンクは、大企業市場に対しては利益率の高い自社開発ソリューションを拡充し、中小企業層に強いグループ各社との連携を強化して顧客数を拡大していくとしている。
また、ソフトバンクは今年度、PayPayの連結子会社化を予定している。23年3月期は、値下げ影響が続くためコンシューマ事業は25%減を見込んでいるが、PayPayの子会社化による連結影響によってヤフー・LINE事業は78%以上の増加を予想しており、営業利益1兆円を目指す。
5Gで通信量単価向上目指す
ソフトバンクに限らず、3社とも携帯電話ユーザーの強固な顧客基盤をベースに、金融やコマース、電気事業などの非通信事業を展開する。さらにポイント優遇などでユーザーを送客するとともに、通信サービスの解約も防ぐという戦略を取っている。契約者数の大幅増が見込めない現在、より成長が見込まれるのが非通信事業だからだ。
とはいえ通信事業が収益を支えていることは間違いなく、料金値下げで下がってしまったARPU( Average Revenue Per User:1契約あたりの売り上げ)の再上昇を図っている。それには、データ利用量が格段に増える5Gのエリア拡大が重要だ。
KDDIとソフトバンクは4G用周波数を5Gに転用することでエリアを広げてきた。ソフトバンクは22年3月に5Gの人口カバー率90%を達成。工事で若干苦戦したというKDDIも、生活動線に沿ったエリアから5G化を進めており、今期早々の90%達成を目指す。ドコモは5G用の周波数帯を使った「瞬速5G」にこだわってきたが、総務省が3月に発表した「全国のデジタル田園都市構想」に応えるべく、4G用周波数の転用も行っていく(記事参照)。
3社とも、値下げの影響は24年3月期あたりで薄れるとみている。
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