ドコモも踏み出す「なんちゃって5G」って何だ?:房野麻子の「モバイルチェック」(1/3 ページ)
NTTドコモが、4Gの周波数を利用して5Gのエリア展開を行うことを発表した。4G用の周波数を使った場合は帯域幅が変わらないので、速度は4Gと同等になる。こうしたことから、転用周波数を使った5Gは「なんちゃって5G」と揶揄されることもある。
NTTドコモが、4Gの周波数を利用して5Gのエリア展開を行うことを発表した。ドコモはこれまで、3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯という5G専用の周波数帯を使ったエリア展開を「瞬速5G」として行ってきたが、それに加え、700MHz帯、3.4GHz帯、3.5GHz帯など4Gで使っていた周波数を利用した5Gエリアの展開も進めていく。ただし、プレスリリースには「4G周波数を利用した5Gの通信速度は、4Gと同等となります」との注釈がある。
5Gは「高速大容量」「低遅延」「多数同時接続」が特徴とされているが、その3つすべてを満たせるのは、電波だけでなくコアネットワークも含め、すべての通信設備が5Gになった「5G SA」(SAはStand Alone:スタンドアローン、単独)方式だ。現在はコアネットワークに4Gの設備を使うNSA(Non-Stand Alone)方式で展開されているエリアが多い。
NSA方式の5Gでは、一部で4G用の設備を使うため、5Gサービスを早く導入できるという利点がある。そのため5G開始当初はNSA方式の5Gが広まっていった。NSAでは、端末と基地局が通信する際に、制御信号は4Gの設備を使ってやり取りし、5Gの設備はデータ信号だけを伝送する。そのため、NSA方式の5Gでも高速大容量通信は実現できる。
それなのに、4G周波数を利用した5Gの通信速度が、4Gと同等となるのはなぜか。それは周波数の帯域幅の違いだ。基本的に、周波数の帯域の幅が広いほど多くの情報を伝送できる。帯域幅が広いと一度に大量のデータを伝送できるので短時間でデータをやり取りでき、結果的に通信速度が速くなるというわけだ。
下の表を見ていただくと分かるが、ドコモが5Gに転用するとしている700MHz帯は20MHz幅、3.4GHz帯と3.5GHz帯はそれぞれ40MHz幅だ。一方、5G用として割り当てられた周波数帯は、3.7GHz帯と4.5GHz帯が200MHz幅、28GHz帯は400MHz幅となっており、最大10倍もの幅がある。
5G専用の周波数帯を使うと帯域幅が広いので超高速大容量通信が可能だが、4G用の周波数を使った場合は帯域幅が変わらないので、速度は4Gと同等になる。こうしたことから、転用周波数を使った5Gは「なんちゃって5G」と揶揄(やゆ)されることもある。
関連記事
- シェア10% なぜ日本で「iPhone SE」がここまで人気なのか?
iPhoneの廉価モデル「iPhone SE」の第3世代モデルが、3月9日に発表された。日本のスマートフォンユーザーの約半分がiPhoneを使っているといわれるが、その中の2割に近いユーザーがiPhone SEを使っており、人気の高さがうかがえる。では、なぜ日本でこれほどiPhone SEが人気なのだろうか。 - 幻想の5G 技術面から見る課題と可能性
夢のように語られる5G。課題としていわれるのは、エリア展開の遅さと料金面についてが多い。しかし、5Gを技術面から見た場合はどうか。「4Gと何が違うのか。本当の意味で違うのは、ミリ波帯域が併用になってきたとき。現状、3Gから4Gになったときのような感動は、あまり得られないだろう」と、無線通信技術の専門家、ピコセラの古川浩社長は話す。 - これが“真の5G”? 携帯電話キャリアが始めた「5G SA」とは
2月21日、KDDIは法人向けに「5G SA」の商用提供を開始したと発表した。「5G SA」の「SA」は「Stand Alone(スタンドアロン)」を意味する。5G SAは、無線通信からコアネットワーク(認証やデータパケットの転送経路の設定、移動制御などの機能を持つ設備)まで、すべての基地局設備が5G専用に開発されたもので提供する。 - 日本も「電波オークション方式」を導入? 4キャリアの入り乱れる思惑
携帯電話サービスにとって、電波、つまり周波数の割り当ては非常に重要な問題だ。海外で普及している電波オークションについて、各社のスタンスはさまざまだ。ただ、1次とりまとめの骨子(案)を見る限り、電波オークションは導入される可能性が高い。 - モバイル事業でさらに赤字拡大の楽天、収益改善のタイミングはいつか?
携帯電話事業はエリア構築のため先行投資が必要で、事業開始当初、コストがかさんで赤字が続くのは仕方がない。しかし、そろそろ黒字化の見通しも知りたいところだ。三木谷浩史社長や楽天モバイルの山田善久社長は「22年第1四半期を収益のボトムに、22年第2四半期以降は収益の改善を見込む」とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.