シリーズ10万台も売れた! 「おりょうりケトル ちょいなべ」誕生のきっかけは?:あの会社のこの商品(6/6 ページ)
パッと見たところ電気ケトルなのに調理も可能なモノが、この数年間でいろいろ登場している。先鞭をつけたのは、シロカの「おりょうりケトル ちょいなべ」。調理家電で新ジャンルを確立したこの商品は、なぜ生まれたのか? 同社の開発担当者とマーケティング担当者に話を聞いた。
一過性のアイデア商品で終わらせない
同社は「おりょうりケトル ちょいなべ」が顧客に提供できるベネフィットを、「使い勝手がいいこと」と「温度調節機能を使って手軽に料理楽しんでもらえること」と定めた。これらのベネフィットをどうやって伝え、需用を創造するかが販売の焦点になった。
需用創造のために主に取り組んだことは、レシピ提案と食品メーカーとのタイアップの2つ。レシピは鍋料理が中心だが、中には火加減が難しいチーズフォンデュのようなものもある。チーズフォンデュは温度調節機能があるからこそ提案できた。現在50近いレシピがシロカの公式Webサイトで公開されている。
一番力を入れているのが食品メーカーとのタイアップだ。一番長く続いているのがエバラ食品工業とのキャンペーンで、発売以来毎年実施している。
エバラ食品工業とのキャンペーンは毎年冬に実施。21年は鍋料理や調理風景を納めた画像に所定のハッシュタグをつけてInstagramに投稿した中から抽選で、「おりょうりケトル ちょいなべ」とエバラ食品工業の「プチッと鍋」のセットをプレゼントした。家電量販店の店頭でも、ノベルティーとして「プチッと鍋」をつけ、鍋料理に使えることを訴求している。
22年3月には、新たな試みとして同社と亀田製菓、月桂冠の3社による「部屋でお花見を楽しもう!プロジェクト」を始めた。「オンライン飲み会のときに便利」といった声をヒントに、コロナ禍でできなくなったお花見を家で楽しめるものとして3社の共同プロジェクトを起案した。
開設した特設サイトでは、福岡、山梨、福島各県の桜の名所を紹介しているほか、3カ所の郷土料理を「おりょうりケトル ちょいなべ」でつくるときの調理ポイントを提供する飲食店がレクチャーしたり、郷土料理と月桂冠の日本酒「THE SHOT」とのペアリングを提案したりしている。リツイートキャンペーンも実施しており(現在は終了)、「おりょうりケトル ちょいなべ」を含む3社の商品で構成されたオンラインお花見グッズが抽選で4人に当たっている。
「一過性のアイデア商品で終わらせたくありませんでした」とひばり野氏。レシピの提案や食品メーカーとタイアップすることで需要を創造してきたが、生活に根づいた商品にするには、これまでの取り組みを地道に継続し、使って調理してみたくなる気にさせ続けていくことが求められる。
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