6兆円が消えた「LUNA-UST騒動」 危ないステーブルコインの特徴:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
価格変動リスクが低いとされた、USTとよばれるステーブルコインと、そのトークンであるLUNAの崩壊によって、6兆円もの価値が暗号資産市場から消え去った。結局のところ、「どれくらいその資産が信頼できるか」の度合いが高いほど「利回りは低く」なり、その度合いが低ければ「利回りが高くなる」。
価格変動リスクが低いとされた、USTとよばれるステーブルコインと、そのトークンであるLUNAの崩壊によって、6兆円もの価値が暗号資産市場から消え去った。
価格が常に1米ドルに連動することを目的とした「ステーブルコイン」のうち、テラブロックチェーンで稼働するUSTは、高い利回りを提供していたことが魅力だった。
DeFi(分散型金融)プラットフォーム上では、他のステーブルコインが年利換算にして1〜3%程度の利回りを提供する中、USTでは独自のプラットフォーム上で20%以上の高い利回りを投資家に供給し続けていた。
しかし、12日に何らかの要因で米ドルとのペッグが外れてきたことによって、USTの信頼に揺らぎが生じた。米ドルとの交換ができなくなると恐れた投資家が取り付け騒ぎ的にUSTや、その担保資産であるLUNAを手放すことによって両トークンの価格は暴落した。合計で6兆円ほどの時価総額が露と消えてしまったのだ。6兆円といえば、ちょうど三菱商事が丸ごと消えてしまうレベルである。
現在、1ドルに連動するはずのUSTは0.086ドルで取引されている。そのトークンであったLUNAは、4月の高値である119ドルから現在は0.000145ドルで取引されており、ほぼ無価値となった。
騒動が発生した12日には、USDTとよばれる世界トップシェアのステーブルコインにも投資家の不安が波及した。1USDTが0.95ドルになるまでUSDTが売り込まれ、ペッグが外れたのだ。現在は1USDTが0.99870ドルと、“ほぼ1ドル”まで回復しているが、騒動前は“ぴったり1ドル”で取引されていたことからすると、今回の騒動は未だ爪痕を残しているといっていいだろう。
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