なぜJR東海は、わざわざ奈良でキャンペーンを始めたのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(8/9 ページ)
JR東海の奈良キャンペーン「いざいざ奈良」がスタートした。これまで17年間、JR東海の奈良キャンペーンは「うましうるわし奈良」として展開されてきた。それをなぜ変えたか。なぜ今なのか。背景を考える。
団体旅行から個の旅へ、観光キャンペーンの新時代
奈良に限らず、観光キャンペーンを取り巻く環境は常に変化している。93年から始まる奈良キャンペーンは、「修学旅行の奈良」から「大人になってもういちど訪れたい奈良」を訴求した。京都・奈良といえば団体旅行の代表格だ。それを個人やグループ旅行向けに展開する。しかし、当時はまだインターネットが普及しておらず、旅行会社のパッケージツアーが手っ取り早かった。
「うましうるわし奈良」の17年間で、旅の環境は大きく変わった。オンライン予約が普及して、個人でも手軽に宿を手配できる。EX予約、スマートEXによって、新幹線もスマートフォンで予約、チケットレスになった。国鉄時代にはなかった新幹線の「早期割引」「閑散時間帯割引」も行われている。年会費無料のスマートEXは観光客の利用者も多いという。
近年はコロナ禍、ウィズコロナの影響で、東海道新幹線の需要も大きく変化した。インバウンドも激減する中で、国内旅行需要を掘り起こす施策が必要だ。
JR東海は観光需要拡大のため、予約アプリに「EX 旅のコンテンツポータル」のリンクを設定した。朝の奈良公園の「鹿寄せ」と抹茶のおもてなし体験、「鹿寄席」と「ならまちの贅沢(ぜいたく)な和朝食」は、宿泊を促すメニューだ。人気殺到で予約必須のかき氷店「ほうせき箱」の予約もできる。寺社巡りから街歩きの流れをつくる。
歴史を訪ねるメニューもある。「三人寄れば文殊の智恵」の安倍文殊院では、一般には立ち入れない本堂奥内陣などで参拝、祈祷を受けられる。お寺のかたの案内付きで唐招提寺御影堂、修理中の東大寺戒壇堂、大仏殿を拝観できる。
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