楽天モバイルはなぜ「0円廃止」に追い込まれたのか?:房野麻子の「モバイルチェック」(2/3 ページ)
楽天モバイルが1Gバイトまで0円を廃止し、有料化。これを好機と、KDDIとソフトバンクは楽天モバイルのライトユーザーの刈り取りを開始。キャンペーンなどで乗り換えを促進している。しかし、ではなぜ楽天モバイルは「0円廃止」に追い込まれたのだろうか。
楽天を狩場とするKDDIとソフトバンク
楽天モバイルの0円停止で、早速ユーザーは他社の低料金プランに移行し始め、KDDI、ソフトバンクはその獲得に動いている。
とはいえ、0円を魅力に感じて楽天モバイルを使っていたユーザーが他社に移行したからといって、急に大量のデータを使うようになるわけではないだろう。事業者にとって上顧客にならない可能性の方が高い。
それでも、2ブランドは楽天モバイルとは異なる。povo2.0もLINEMOも、ずっと無料で使えるわけではない。povo2.0は基本料こそ0円だが、180日間以上有料トッピングの購入がない場合、利用停止、契約解除となることがある。買い物やサービスの利用でギガがもらえる「#ギガ活」もせずに0円0Gバイトのときは、送受信最大128kbpsとなり、いざというときのための回線として維持しておくにはいいが、快適には使えない。
LINEMOの今回のキャンペーンは、MNPで契約するとPayPayポイント990円相当が最大6カ月間、毎月プレゼントされるというものだ。ミニプランは6カ月間実質無料になるが、それ以降は990円の月額料金が課金される。「UN-LIMIT VI」のように、ずっと0円ではない。
さらに、2ブランドには高額なローミングコストがあるわけでもない。楽天の三木谷浩史氏は、決算説明会の度にKDDIのローミング費用が高いと発言していた。楽天モバイルの契約者数が増加するのに伴って、ローミング費用も増加しており、契約者を増やしたいのに思い切って獲得に注力できないという状態だった。
このローミングコストを減らすため、楽天モバイルは自社エリア拡大を急いだが、そのために設備投資も増えている。当初、総務省に提出した開設計画では、6000億円で2026年3月までに基地局を約2万7000局建設し、人口カバー率96%を達成するというものだった。それが、22年4月末時点で4万4000局を建設し、22年4月時点で人口カバー率97%超を達成、年末には99%に近づくとしている。計画が4年前倒しされた格好だが、設備投資額も30〜40%ほど増えると予想していて、7800億から8400億円に膨らむ計算になる。
楽天は当初の事業計画を大きく変えたが、他キャリアにそうした動きはない。計画通り、今後、5Gエリアが広がり、5Gならではの魅力的なサービスが登場してくれば、小容量ユーザーもデータ使用量が増えていく可能性もある。ユーザーが定着してくれれば、非通信サービスの利用も期待できる。自社経済圏を循環する顧客を増やすために、ユーザー獲得に動くのは当然のことといえる。
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