ビットバンク、三井住友トラストと仮想通貨カストディ参入 鶏が先か卵が先か?:金融ディスラプション(2/3 ページ)
仮想通貨交換業を営むビットバンクは5月24日、仮想通貨などデジタルアセットに特化した信託会社の設立を、三井住友トラスト・ホールディングスと共同で進めていくと発表した。機関投資家や事業会社向けにデジタルアセットを保管・管理する、いわゆるカストディ業務を行う。
ブロックチェーンゲーム、NFT、拡大する事業会社
金融商品としての仮想通貨だけでなく、事業会社からのカストディニーズも今後急速に高まることが予想される。NFTの勃興とともに、ゲーム会社やスポーツ、エンタメ関連会社がブロックチェーンゲームやメタバースビジネスに参入しているからだ。
こうした事業会社にとって、最大のリスクは発行したネイティブトークンの管理にある。290万人が登録する大人気ブロックチェーンゲーム「アクシー・インフィニティ」では、3月にブロックチェーンが攻撃され、約750億円が流出するという事件が起きた。「ネイティブトークンを発行しても、取り扱いを間違えると、本体の母屋を脅かしかねない」(廣末氏)。安心して事業ができる環境を作るために、カストディのニーズはますます高まることが予想される。
仮想通貨交換業と信託会社しか取り扱えない日本
一方で国内でカストディがこれまで生まれなかった理由には、法律面もある。有価証券のカストディは信託銀行が行う場合が多いが、仮想通貨では信託銀行がカストディを担えず、仮想通貨交換業者と信託会社しか行えないためだ。
仮想通貨交換業者は、株式でいう証券会社と取引所とカストディアンを兼ねてきた。3つの役割を各社がこなさなければならないのは、技術的にもガバナンス的にも厳しい。そんな中、廣末氏は「保管事業を8年間やってきたが過去一度も流出などの事故がない。ノウハウは業界随一」だとビットバンクの実績を強調する。
だからこそ、ビットバンクからカストディ業務をくくり出してJADATを設立するわけだ。ビットバンク自体もカストディ業務をJADATに移管する計画があり、他の仮想通貨取引所のカストディを引き受ける構想もある。「カストディを個社がやるのは非常に無駄。できる会社が横断的にやることで、全体最適を目指すべきだ」(廣末氏)
関連記事
- ミクシィ、ビットバンクに70億円出資 ゲームと仮想通貨を組み合わせた新事業狙う
ミクシィは9月2日、仮想通貨取引所のビットバンクに約70億円を出資すると発表した。増資引き受けは9月30日を予定している。両社は業務提携を結び、仮想通貨とコンテンツの組み合わせで新事業を創出していく。 - ビットコイン本位制——ビットバンク廣末CEOが描く仮想通貨の未来
ビットバンクの創業者である廣末紀之CEOは、証券からIT、そして初期からの仮想通貨(暗号資産)を見てきた。同氏は、現在の仮想通貨を巡る状況をどのように分析しているのか。 - 時価総額4兆円のルナ、一夜で価値ゼロに ステーブルコインUSTはなぜドル連動が崩壊したのか
時価総額4兆円を超える仮想通貨でも、一夜で価値がゼロになることがある。今回、韓国のソウルに本社を置くテラフォームラボの仮想通貨「ルナ(Luna)」に起こったことがそれだ。 - ビットコインなぜ上昇? これまでとの違いは企業の動き
ビットコインの価格が10月22日に130万円を超え、年初来高値となった。ビットコインは価値を計算する根拠がないため、本質的な価値がないともいわれ、価格変動の大きい資産として知られる。しかし、今回の上昇はこれまでとは違う要因かもしれない。 - ビットコイン価格を押し上げた機関投資家 日本の状況は?
2020年年末から年初にかけて、ビットコイン価格は200万円台から400万円超まで上昇し、過去最高値を付けた。これをけん引したといわれるのが、米国の上場企業や機関投資家による購入だ。では国内の上場企業や機関投資家の仮想通貨に対する動きはどうなのか。 - 松屋銀座で使える日本円連動ステーブルコイン「JPYC」が伸びている理由
ステーブルコイン「JPYC」がじわじわと使われ始めている。JPYCとは仮想通貨イーサリアムのブロックチェーン上で発行された「前払式支払手段扱いのステーブルコイン」だ。JPYC社が1月に発行を開始した。発行総額は11月時点で3億円超。日本で個人が入手して利用できる円建てデジタル通貨としての存在感を持ってきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.