PS5増産の背景に「悪質転売」も? 規制妨げる独占禁止法の矛盾(2/2 ページ)
2020年11月の発売以降、世界的な人気から品不足に陥っている家庭用ゲーム機「PlayStation 5」(PS5)。ソニーグループが、サプライチェーンの制約が緩和されたとして、同機の生産を大幅に拡大する方針を発表した。
法規制、プラットフォーマー側は否定的
ただ、対策がないわけではありません。悪質転売に最も効果的なのは転売ヤーのシステムを支えている、フリマアプリやネットオークションなどによるプラットフォーマーの自主規制です。
しかし、悪質転売の商品は取引も盛んで、手数料収入はプラットフォーマーの収益の源泉です。そうなると、転売ヤーを支えるプラットフォーマーに悪質転売の自主規制を求めることも、難しいわけです。実際、悪質転売に苦しむ企業側が、プラットフォーマーに対策を求めたケースもありますが、上手くいかないのが実態です。
現在、悪質転売の対策で最も有効なことが立証されているのは法規制です。新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクや消毒液が悪質転売のターゲットになると、政府は20年3月以降、国民生活安定緊急措置法に基づく、転売規制を発動(現在は解除)。これには、プラットフォーマーもさすがにすぐに動き、対応しました。
この事例から悪質転売に対して法規制を求める声もあるのですが、プラットフォーマー側は否定的な見解を示しています。このあたりで“本音”が見えるのも興味深いところです。
一企業が対応可能な領域を超える「悪質転売」
商行為に対して、安易な法規制をするべきでないのはその通りですが、悪質転売は、もはや企業が対応できる領域を超えているのも事実です。
そして悪質転売は、PS5だけの問題ではありません。これまでも多くの人気商品がターゲットになり、これから未来に生まれるであろう人気商品も、次々とターゲットになっていくでしょう。
強者である大企業を抑え込み、消費者の利益保護を狙った独禁法が、逆に消費者の利益を阻害しているのが皮肉です。いずれにしてもビジネスで、悪質転売は、念頭に置くべき事項の一つと言えます。
対策をおろそかにしては、消費者からマイナスイメージを抱かれる問題は変わりませんが、有効な対策も限られています。実に頭の痛い問題といえそうです。
書き手:河村 鳴紘(かわむら・めいこう)
ゲーム、アニメ、マンガなどを主戦場にするフリーランスのサブカルライター。ヤフーオーサー、マンガ大賞選考員。メディア所属時には、決算会見や各発表会に参加し、独自記事なども執筆。20年以上ゲーム業界を中心に取材している。2020年5月、「ドラゴンクエスト」大ヒット連発なぜ? 30年前の伝説の熱狂」でヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞した。「文春オンライン」や「Number Web」(ともに文藝春秋社)などでも記事を執筆。静岡放送などでラジオに出演することも。
ヤフーニュース個人:「河村鳴紘のエンタメ考察記」
Twitter:@kawamurameikou
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