成城石井、上場へ 消費意欲が下がる中、高価格帯スーパーに勝ち目はあるか?:小売・流通アナリストの視点(5/5 ページ)
ローソングループの成城石井が東証プライム市場に上場することが明らかになった。「巣ごもり特需」も消え、食品スーパー各社が苦戦する中、成城石井はなぜ今上場するのか。消費意欲が下がる中、高価格帯スーパーである同社に勝ち目はあるのだろうか──?
これから出店を拡大できるか 成城石井の転換期
ご存じの通り、首都圏、京阪神以外の生活動線の主流はクルマに移行しており、こうした地方エリアにおいては上位政令都市を除き、駅を中心とした市街地は既に交通のハブとしての機能が著しく低下している。地方での消費者の生活動線は幹線道路となっており、買物におけるハブは郊外型大型商業施設となっている。地方エリアでは駅ビルのある駅は極めて限定的であり、あったとしても買物動線からは外れている。成城石井の出店適地である「駅ビル」は地方エリアにはほとんどない。
これから成城石井がさらに出店を拡大していくためには、首都圏、京阪神の駅前再開発や駅ビル改装を押さえるか、郊外型ショッピングセンターの新規出店、改装などを取り込む、といったタイミングにならざるを得ない。
いくらでも空地がある郊外ロードサイドに出店して業容を拡大できる一般的なチェーンストアとは事情が異なるということだ。未出店の駅ビル内に進出するにしても、駅ビルには既存のスーパーが営業しており、そう簡単には明け渡してはくれない。郊外型ショッピングセンターに出店しようにも、地方の集客力あるモールの大半は、イオンやイズミなど大手流通グループの運営であり、自社グループを優先するのが普通であろう。
首都圏という最大のマーケットにおいて、駅ビル立地で1000億円以上にまで成長した成城石井は、出店立地、対象顧客層の再構築という転換期が来ているのかもしれない。ローソンはこうした背景を十分に理解していればこそ、この時期に上場して投資を一部換価しようと考えたのだろう。ローソンにとっては、食品スーパー成城石井の中長期的課題解決に取り組むことより、転換期にある本業コンビニへの投資を最重要課題と考えるのは、ある意味当然かもしれない。
それはさておき、原材料高騰、円安などによる各種食品の値上げのニュースが毎日のように報じられるご時世になった。さまざまな社会情勢を背景とした物価上昇であり、やむを得ないとはいえど、消費者としては給与所得などの改善が追い付かない状況にあるため、財布のやりくりで凌いていくしかない。
入りが増えない中、支出が増えるとなれば、優先順位をつけて支出を削らねばやっていけない。日常消耗品の買物に関しても、これからは価格選好の傾向となるのであれば、品質の高い商品をそれなりの価格で提供する品質訴求型のスーパーにとっては、逆風となることも懸念される。
上場準備を進める成城石井は、これからの成長戦略を示していくことが求められるが、大きく変化しつつある消費環境の下での出店立地の再構築という課題を抱え、難しいかじ取りを迫られることになるだろう。
関連記事
- 話題の“ヤクルト1000”に長蛇の列 日本橋駅に突如出店──そのワケは?
ヤクルト1000が飛ぶ鳥を落とす勢いで売れている。そんな中、ヤクルトは東京メトロ銀座線・日本橋駅のイベントスペースに突如出店。連日購入者が列をなしている。なぜ、日本橋駅に出店をしたのか。また、ヤクルト1000の売り上げや現在の流通状況はどのようになっているのか。話を聞いた。 - 無印良品がプロデュースする団地とは? 商店街や広場まで丸ごとリノベ、堂前社長「ものすごく可能性がある」
千葉市に、「無印良品」がプロデュースする団地が登場するという。良品計画、MUJI HOUSE、都市再生機構(UR)、千葉市が協力して「団地まるごとリノベーション」プロジェクトを始動。築54年の花見川団地で、住戸の内装、外装、団地内の商店街や公園なども丸ごと無印良品のテイストで改修する。どんな団地が生まれるのか? 良品計画はこのプロジェクトを通し、何を目指すのか? 良品計画・堂前社長に話を聞いた。 - “買いすぎ防止”スマホレジを導入したら、客単価が20%上昇 イオン「レジゴー」の秘密に迫る
イオンのレジに革命が起きている。買い物客が貸し出し用のスマートフォンを使い、かごに入れる前に商品をスキャン、専用レジで会計する「レジゴー」だ。スキャンにかかる時間は約1秒。レジでは決済のみを行うため、レジ待ちの渋滞も起きづらい。常に商品の一覧と合計金額が確認でき、利用者にとっては買い過ぎの防止にもなるレジゴーの導入で、客単価が向上したという。その理由を聞いた。 - 「袋のまま食べられる」冷凍チャーハンが話題! 奇抜な商品のアイデアを生んだ“身近な行動”とは
「自炊どころか皿洗いすら必要ない」と、ネット上で話題になっている商品がある。マルハニチロが販売している、袋のまま食べられる冷凍食品の「WILDish シリーズ」だ。忙しい現代人のニーズに刺さったこの商品の開発の経緯を、マルハニチロの広報に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.