成城石井、上場へ 消費意欲が下がる中、高価格帯スーパーに勝ち目はあるか?:小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)
ローソングループの成城石井が東証プライム市場に上場することが明らかになった。「巣ごもり特需」も消え、食品スーパー各社が苦戦する中、成城石井はなぜ今上場するのか。消費意欲が下がる中、高価格帯スーパーである同社に勝ち目はあるのだろうか──?
成城石井はどこにある
成城石井の店舗数は200店舗あまりあるが、その9割以上が首都圏、京阪神、中京の3大都市圏内に展開している。そのうちの7割弱は首都圏にあるのだが、その出店場所のほとんどが鉄道駅周辺に偏っている。
成城石井の立地を、東京、首都圏(東京以外)、京阪神中部に分けて立地をざっくり分類した図表を作成した。東京都内では9割が駅前立地、うち7割は駅ビル内、東京以外の首都圏でも9割が駅前立地、うち8割は駅ビル内となっている。
この傾向は京阪神、中部においてもほぼ同様である。ちなみに3大都市圏以外の地方エリアにも12店舗ほど出店しているが、これらも全て駅隣接商業施設内である。
大都市圏郊外においては、一部郊外型大型ショッピングモール内に若干出店しているが、その数はかなり少ない。首都圏エリアにおいては駅前単独店やロードサイド単独店も一定数存在するのだが、これらの出店地域は千代田区、中央区、港区、世田谷区、渋谷区、目黒区、神奈川県の田園都市線沿線に集中している。これら地域は平均所得が国内トップクラスとなる「高所得層」居住エリアである。
これらからざっくり言えば、成城石井の出店適地は「高所得者居住エリア及び大都市圏の駅ビル内」である、といってもいい。
出店エリアをこうした立地に絞った展開をしているというのは、成城石井の店舗が成立するためには、生活水準に余裕のある消費者の頭数が一定数以上必要だということを示している。
高所得層の密度が高い都内中心部、もしくは生活に余裕がある消費者が一定数以上通る人流のハブにある駅ビル。これが成城石井の出店適地だとすれば、今後の出店余地は限定的と言わざるを得ない。なぜなら消費者の動線が鉄道と駅を中心にできているような場所は首都圏、京阪神以外にはほとんど存在していないからである。
関連記事
- 話題の“ヤクルト1000”に長蛇の列 日本橋駅に突如出店──そのワケは?
ヤクルト1000が飛ぶ鳥を落とす勢いで売れている。そんな中、ヤクルトは東京メトロ銀座線・日本橋駅のイベントスペースに突如出店。連日購入者が列をなしている。なぜ、日本橋駅に出店をしたのか。また、ヤクルト1000の売り上げや現在の流通状況はどのようになっているのか。話を聞いた。 - 無印良品がプロデュースする団地とは? 商店街や広場まで丸ごとリノベ、堂前社長「ものすごく可能性がある」
千葉市に、「無印良品」がプロデュースする団地が登場するという。良品計画、MUJI HOUSE、都市再生機構(UR)、千葉市が協力して「団地まるごとリノベーション」プロジェクトを始動。築54年の花見川団地で、住戸の内装、外装、団地内の商店街や公園なども丸ごと無印良品のテイストで改修する。どんな団地が生まれるのか? 良品計画はこのプロジェクトを通し、何を目指すのか? 良品計画・堂前社長に話を聞いた。 - “買いすぎ防止”スマホレジを導入したら、客単価が20%上昇 イオン「レジゴー」の秘密に迫る
イオンのレジに革命が起きている。買い物客が貸し出し用のスマートフォンを使い、かごに入れる前に商品をスキャン、専用レジで会計する「レジゴー」だ。スキャンにかかる時間は約1秒。レジでは決済のみを行うため、レジ待ちの渋滞も起きづらい。常に商品の一覧と合計金額が確認でき、利用者にとっては買い過ぎの防止にもなるレジゴーの導入で、客単価が向上したという。その理由を聞いた。 - 「袋のまま食べられる」冷凍チャーハンが話題! 奇抜な商品のアイデアを生んだ“身近な行動”とは
「自炊どころか皿洗いすら必要ない」と、ネット上で話題になっている商品がある。マルハニチロが販売している、袋のまま食べられる冷凍食品の「WILDish シリーズ」だ。忙しい現代人のニーズに刺さったこの商品の開発の経緯を、マルハニチロの広報に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.