成城石井、上場へ 消費意欲が下がる中、高価格帯スーパーに勝ち目はあるか?:小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)
ローソングループの成城石井が東証プライム市場に上場することが明らかになった。「巣ごもり特需」も消え、食品スーパー各社が苦戦する中、成城石井はなぜ今上場するのか。消費意欲が下がる中、高価格帯スーパーである同社に勝ち目はあるのだろうか──?
なぜ今、成城石井の上場なのか
ローソンは、株式の売却で得た資金を株主還元やコンビニエンスストア事業への投資に充てるとしている。
コンビニの国内市場は既に飽和しており、コロナ禍によるオフィス街、事業所向け需要が低迷している影響もあって、コンビニ市場規模や店舗数は頭打ちになっている。コンビニ業界ではこうした動向を踏まえて、これまで画一的であったコンビニの店舗フォーマットを見直し、さらなる商圏の細分化を目指そうとしている。
ざっくり言うなら、これまでの店舗あたり平均年商2億円という損益分岐点をさらに下げて、より小さい商圏(商圏人口が少なくて出せなかった施設内、事業所内、過疎地域など)を取り込むことで、出店余地をもう一度拡大しようというのである。
例えば、DX武装による無人店舗化もそうだし、自販機タイプのミニ店舗の出店実験などもこうした類の取り組みである。運営コストを下げることで、これまでは出店できなかった場所にも進出する店舗フォーマットを作り出そうとしている。
このような仕組みづくりのためには、コンビニ本部は投資資金がこれまで以上に必要になる。特にトップ企業セブン-イレブンとの収益力格差が歴然としているローソンとしては、ここで成城石井という「孝行息子」の潜在価値を活用して、資金を捻出することは理にかなっている。
ただ、なぜ今かといえば、成城石井のビジネスモデルがいったん、踊り場に差し掛かっているということも要因かもしれない。
成城石井はこれまでは順調に売り上げ、店舗数を伸ばし、かつ、ずば抜けて高い収益力を誇ってきた優良企業であることは既に述べた通りだが、裏返せば、一般的な食品スーパーとは異なるビジネスモデルだということもいえる。
同社の店舗網は首都圏を中心に近畿、中部の都市部に展開しており、広く残っている未出店地域への進出によって成長の余地は大きい、という記事も見かけたが、その点に関しては若干疑問が残る。それは成城石井の現在の店舗立地を見ることによって分かる。
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