「電子取引データの電子保存」 23年12月までの期間に気を付けるべきこと:義務化は待ったなし(2/5 ページ)
「電子取引データの電子保存」の義務化は2年間宥恕(ゆうじょ)されましたが、2023年12月までの保存では何に気を付ければよいのでしょうか。24年1月からの義務化で留意すべきポイントと合わせて解説します。
「電子データ保存」の義務化が出てきた背景とは
電子データの保存が必要という話が出てきた背景には、企業間の取引が電子データでやり取りされる機会が多くなってきたことと関係しています。
PCが普及していない時代に作られた税法は、紙の書類だけのやりとりを想定していました。その後、PCが経理に普及し、インターネットによるやりとりも増えると、そのPC内部にある電子データをどう扱うかという点が問題になりました。このやりとりされた電子データは、紙の書類ではないからです。
また、PCやインターネットでお互いの環境が違っても共通して使えるように、PC内部でも紙の書類と同じように扱える共通形式のファイルが普及しました。PDF形式は、そのなかでもよく利用されているものです。
PCで見ているPDFファイルの電子データは、紙の書類ではありません。しかし、経理が紙を前提にしているのであれば、このPDFファイルをプリントして保存を紙に統一することもできました。
21年までの電子帳簿保存法でも、電子取引における電子データについて紙にプリントしての保存を認めてきました。
ここで問題となるのが、紙にプリントした場合に最初の電子データとは状態が異なっているという点です。プリントすると、電子データの特徴である検索のしやすさが失われてしまうという問題もあります。
なぜ電子データの状態にこだわっているかというと、取引の状態を確認するためには、もともとのオリジナルの電子データを確認することが必要なためです。
もし最初の電子データがなければ、その取引の正しさを確認することができません。悪質なケースでは、オリジナルの電子データを改ざんしたあとで、その形跡を隠すためにプリントして実態を分かりづらくしてしまう可能性もあります。また、電子データは紙に比べると、目に見えないために、雑に扱われがちという点も気になるところでしょう。
結局2年間の経過措置が設けられた
先ほど述べた通り、電子取引に関する電子データは、21年12月までは書面にプリントしての保存も可能とされていましたが、22年1月からは電子データによる保存が必要とされています。
これは令和3年度税制改正により、書面出力を認めていた部分が削除されたためです。しかし、この改正が認識され始めたのが21年の中頃からであったために、22年1月からの対応に間に合わない会社が続出する恐れもありました。こうした懸念に対応する必要から、21年12月に発表された令和4年度税制改正により、23年12月までは引き続き書面に出力しての保存を可能とする経過措置が設けられたのです。
なぜこのような混乱が起こったのかを考えてみると、電子帳簿保存法の電子取引については、もともと関心や知名度が低かったことが挙げられます。
嫌みのあるいい方になりますが、書類や電子データの保存の知識を極めたとしても、これによって税金が減ることはありません。こうした点で電子データや書類の保存という分野は、税務でもある意味で「日陰」の扱いでした。
経理担当の皆さんも、近年の電子帳簿保存法の改正については多数の記事を目にされたかと思いますが、それでも電子取引についてはあまり関心を持たれなかったかと思われます。
電子取引の範囲となる電子データは、ほとんどの会社で生じるものといえます。インターネットで買い物をして、販売されたサイトから領収書をダウンロードすれば、これは電子取引です。それにもかかわらず、多くの会社で意識されていたとはいいづらいのは、紙に統一しての処理や保存が可能だったことも一因でしょう。
厳密にいえば書面に出力しての保存も難しい電子取引の電子データもあったと思われますが、これも徹底して要件通りに保存していたと自信をもっていい切れる会社も全てではないでしょう。
私から読者の皆さんにお伝えしたいことは、注目度が高まったことで、電子取引に関する電子データの保存状態をあいまいにしておくことは、今後は難しくなったということです。
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