「電子取引データの電子保存」 23年12月までの期間に気を付けるべきこと:義務化は待ったなし(4/5 ページ)
「電子取引データの電子保存」の義務化は2年間宥恕(ゆうじょ)されましたが、2023年12月までの保存では何に気を付ければよいのでしょうか。24年1月からの義務化で留意すべきポイントと合わせて解説します。
24年1月からの義務化ではここに留意する
電子データを保存するといっても、単にPCのなかに適当に置いておけばよいわけではありません。保存要件を理解することで、自社に最適な方法を考える必要があります。
図表2は、電子取引に関わる電子データの保存についての要件です。これらの具体的な意味を説明します。
まず「真実性の要件」ですが、その電子データが本当に正しいものであるかを確認できる状態を確保することが求められます。
電子データは改ざんが比較的簡単と考えられているため、受け取ったときの電子データと、後日確認したときの電子データが本当に同じものであるか、または電子データを管理できている状態が必要です。
要件の1と2はタイムスタンプという仕組みを利用します。タイムスタンプは、その電子データが存在したことを証明するシステムです。しかし一般的な中小企業では、全ての取引情報にタイムスタンプを付与することは難しいため、3と4の方法を検討することになるでしょう。
3は、自社で利用しているシステムが対応できる場合は可能ですが、それ以外の場合は4の「訂正削除の防止に関する事務処理規程」による運用で対応します。4であればシステムもコストも不要です。この事務処理規程のひな型は一問一答の問24に掲載されているので、自社に合うかたちで取り決めて運用すれば要件を満たせます。図表1で洗い出した電子取引の範囲もこの規程に記載します。
次に「可視性の要件」ですが、1はPCなどを普通に使っていれば要件を満たせることでしょう。マニュアルの備え付けは、冊子のほかにオンラインマニュアルでも必要に応じて表示、印刷できれば問題ありません。
そして、この要件のなかで最大の留意点であるのが、3の「検索機能の確保」です。
検索機能の確保とは、保存された電子データが多数あるなかで、その該当するデータを探しやすくしておく措置です。電子データは紙のようにペラペラめくって探すことは難しいので、その電子データが分かりやすく整理されていることが必要なわけです。
検索と聞くと特別なシステムが必要なように思えますが、必ずしもそのようなことはありません。要件としては、該当するファイルの取引情報を検索できればよいため、ファイルに関する「取引年月日・取引先名・取引金額」が検索可能であれば、要件を満たします。
なお、税務調査においてダウンロードの求めに応じることができるのであれば、範囲指定による検索や組み合わせによる検索機能は不要という、要件の緩和も行われています。
一問一答の問12では小規模事業者を想定した対応として、電子データのファイル名を「取引年月日・取引先名・取引金額」が分かる規則的な名前にしてフォルダ分けにより保存する対応や、Excelによる索引簿を作成してファイル名と対応させることで検索ができるようにしておく措置も認められています。このほか、自社が利用しているシステムによって検索機能を確保できる可能性もあります。
なお、2期前の売上高が1000万円以下の場合は、この検索機能の確保は不要とされています。
こうして考えてみると、電子データを保存するための措置としては、ひと手間かかるように見えるため、経理の負担が増えるように感じるかもしれません。しかし実際には、電子データを紙に出力するという点で同じようにひと手間かかっていたことも事実ですし、用紙代とプリント代の負担もありました。
電子データの保存が負担に感じるのは、紙ベースの処理に統一するほうが楽だったからともいえます。その点を踏まえると、紙ベースの処理と電子データの処理が併存することについても、気にする必要があるかもしれません。経理として紙で扱ったほうが便利な場合は、その電子データを紙にプリントすることは構いませんが、オリジナルの保存としては税法が定める期間まで電子データを残すことが必要です。
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