日本は「Web3」で勝てるのか 残念ながら「前途多難」:世界を読み解くニュース・サロン(6/6 ページ)
自民党が「岸田トークン」の配布で「Web3」に乗り出そうとしている。これまでインターネットなどで遅れてきた日本に、「Web3」で勝算はあるのだろうか。現時点で見えている課題は……。
日本の「web3」の問題点
残念ながら、自民党の青年局のやる気もむなしく、現在のままでは日本が「Web3」で世界をリードするのは容易ではないだろう。
問題点はいくつもあるが、まず税制の問題だ。暗号通貨1つとっても、雑所得扱いで最高税率は55%にもなる。暗号通貨の取引も税制的にややこしく、積極的に使わない人も少なくないだろう。
今の日本では、NFTの扱いがあいまいなままで、NFTが決算に使われる場合の扱いや、NFTの一部サービスでも賭博罪との関連が指摘される場合もある。また日本でトークンを発行するには時間がかかる事前審査があり、スタートアップが海外に流出しているケースもあるという。
岸田首相いわく、「4万以上のアナログな規制を洗い出し、3年間で一気に見直す大革命を今進めています」とのことだ。4万件と言われると、前途多難と言わざるを得ない。
ただ日本でも個人で頑張っている人たちもいる。例えば、04年10月に新潟県中越地震によって深刻な被害を受けた山古志村だ。地震で仮設住宅などに入った人たちの多くは村には帰っておらず、過疎化が進んだ。
そこで、地元発のアートをNFTで販売し、代わりにデジタル住民票を提供した(アートが電子住民票になっている)。集落の存続をかけて、デジタル住民らが意思決定などに参加して町おこしなどを試みている。
「Web3」はまだまだあいまいな部分も多い。さまざまな試みが出てくるだろうが、少なくとも日本政府には、新しい技術の導入に積極的な人たちの足を引っ張るようなことだけはしないように願う。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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