連載
佐賀県の負担金は? ゲーム理論で導き出した「九州新幹線西九州ルート」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/7 ページ)
「九州新幹線西九州ルート」の新鳥栖〜武雄温泉間の着工の見通しが立たない。理由の1つが「佐賀県の負担金問題」だ。佐賀県は在来線で不満はなく、フル規格の費用負担は見合わない。経済学のゲーム理論によれば、3者が最も合意しやすい負担額は「佐賀県と国の負担減、長崎県の追加負担あり」と試算された。
3者が納得できる範囲「コア」と唯一解「仁」
ゲーム参加者にとって、便益よりも負担額が小さければ「プラス」であり、納得できるプロジェクトといえる。そこで3者の妥協点を探ってみよう。国、佐賀県、長崎県を頂点とする正三角形を描き、最も遠い点を重ね合わせて、3者の領域が重なったところが「納得の範囲」となる。
ゲーム理論のほとんどは「囚人のジレンマ」のような2者モデルとなるけれども、3者モデルの場合はこのような三角図が分かりやすい。費用については、頂点にとって離れた線をゼロとし、頂点に向かう高さを算定額とする(出典:大阪大学大学院経済学研究科経済学専攻 別府英俊、九州新幹線(西九州ルート)における費用分担問題 課題研究説明資料)
ちなみに、ゲーム理論で算出した現状の枠組みを点で示すと、佐賀県の933億円は許容範囲を超えてしまいゲームは不成立。佐賀県は話し合いのテーブルにつく意味がない。与党PTが示した佐賀県660億円は、佐賀県長崎県とも納得できる。国の許容範囲は超えてしまうけれども、与党PTは国の指導的立場だから、政府内で解決すればいいことになる
関連記事
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - 新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか
JR東海といえば「東海道新幹線を運行する会社」「リニア中央新幹線を建設する会社」というイメージが強い。報道も新幹線絡みが多い。しかしほかのJR旅客会社と同様に在来線も運行している。そして「新幹線ばかり優遇して、在来線の取り組みは弱い」という声もある。本当だろうか。 - 不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか
鉄道ファンにとって最高の「借景」が楽しめるトレインビュールーム。名が付く前は、線路からの騒音などで不人気とされ、積極的に案内されない部屋だった。しかし鉄道ファンには滞在型リゾートとなり得る。トレインシミュレーターや鉄道ジオラマなど、ファンにうれしい設備をセットにした宿泊プランも出てきた。 - 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。 - 東京メトロ「有楽町線」「南北線」の延伸で、どうなる?
東京メトロ有楽町線と南北線の延伸が決定した。コロナ禍で事業環境が大きく変化する中、東京メトロが計画する今後の戦略とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.