SmartHRの営業社員はなぜ成果を出し続けられるのか? トップ営業に頼らない組織運営の裏側:先駆者たちの「セールスイネーブルメント」(2/3 ページ)
SmartHRの営業社員はここ3年で3倍以上に増加した。採用・育成コストが数倍になる中でも、営業組織の目標を達成し続け、営業成績は右肩上がりだという。組織規模の拡大と営業成績の達成をどのように両立させているのか? 全員が成果を出し続ける仕組みの秘けつを聞いた。
ナレッジ共有の仕組みを作り、組織全体の資産に
──新入社員への教育以外に、質の高い営業をキープするための取り組みはありますか?
PMとビジネスサイドをつなぐPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)がいて、その方々と一緒に開催している取り組みが2つあります。
まずは、週1で実施している勉強会。内容は回によってさまざまですが、サービスに新機能が搭載された時の回を例にご説明します。
勉強会では、機能自体の説明だけでなく、クライアントから機能に対する要望があった背景やその機能の活用方法を紹介し、実際に商談で話すイメージを持ってもらえるようにしています。
もう一つはナレッジの共有です。営業組織が拡大することで、ナレッジは増えたものの、チームや個人内に留まってしまい、組織全体への共有・活用ができていない状態でした。そこで、ナレッジマネジメントツールやポータルサイトを活用し、ナレッジが組織全体の資産として蓄積される仕組みを構築しました。
上の図を参照しながら具体的に説明します。営業は新しいプロダクトが出たらまずは売ってみる。1カ月ほど経つと、徐々に「このようにしたら売れたよ」との声が上がってきます。それらの声をキャッチアップしながら、社内全体に共有。個々人がそのナレッジを吸収し、また現場に行き、提案する。こういったサイクルを常に回しています。
──ナレッジを1箇所に集めるために、どのように働きかけていったのでしょうか?
とても地道です(笑) 成功事例として使えそうな営業資料が一部のチームのみで共有されていることを発見しては「この資料をこちらに共有してもいいですか?」と本人にお願いしました。その他にも、うまくいった商談で使用した提案資料や議事録を共有してもらっています。商談の流れや実際のコミュニケーションについてはテキストで補足してもらいます。共有資料をきっかけに、他のメンバーがその人に直接話を聞きに行くこともあります。
今は溜まっているナレッジの量が多すぎて、消化不良を起こしている状態です。どのように整理して、運用していくかが今後の大きな課題になっています。
──セールスイネーブルメントの取り組みにおいて大事にしていることはありますか?
当社では、営業力を強化するために「定性的で筋トレ的な営業力強化が7割」「定量的でデータドリブンな営業力強化が3割」ぐらいのバランスを意識しています。
定性的で筋トレ的というのは、いわゆるロープレです。外部の方に入ってもらい、ヒアリング力や質問力、要件を整理する力を鍛えながら、それらを構造的に捉え、商談練習を繰り返すといったことを、半年間かけてやってきました。
定量的でデータドリブンな施策とは、セールスフォースで管理している個々人の商談の分析のことを指します。担当者にアプローチできていないケースもあれば、決裁者の合意を得るフェーズでつまずいている人など、成約に至らない理由はさまざまです。
データを使うことで、一人ひとりの傾向が見えてきます。例えば、決裁者の合意を得るフェーズでつまずいている人の場合は、合意を得るためにはどのように話を進めていくべきかなどをマネジメント層から本人にレクチャーしてもらうように働きかけます。
どの部分でつまずいているのか、つまずきやすいのかを可視化することで、ネクストアクションを決めたり、今後の提案の方向性を再考したりと効果的な策を講じることができるようになります。
研修や勉強会の登壇者を決めるのにも、セールスフォースのデータを使います。新しいプロダクトを既に何件も売っている人や、新しいプランを最初に売った人などに声がけをしてナレッジ共有の機会を設けています。
──取り組み中に一番大変だったことを教えてください。
商談のフェーズ管理方法はセールスイネーブルメントの取り組みの初期段階から定義していたものの、どこまで具体的な活動や中身として型化すべきかは、ずっと固めきれず悩んできました。
理由は2つです。1つ目は、インバウンドとアウトバウンドで対応が変わること。問い合わせがある企業はサービスに興味を持ってくださっています。そのため、プロダクトの詳細や活用方法などを説明をし、使用イメージを持ってもらうことが重要です。一方、アウトバウンドでは全く異なるアプローチが求められます。また、業界業種、会社の規模感や東京か地方かによっても課題は変わってきます。
2つ目には競合が出てきたことが挙げられます。18年ごろ、まだ人事・労務業務の効率化を提案するサービスはあまり多くなかったと認識しています。しかし、ペーパーレスやテレワークといった潮流から、人事・労務業務の効率化を提案するサービスが徐々に広がっていきました。SmartHRの一部機能と同様に労務課題を解決するサービスが出てきて、選択肢も増加。移り変わりが激しい市場で、画一的な提案資料は意味をなさないと考えていました。
ただ最近になって、ハイパフォーマーの営業プロセスはある程度、型化されていることを再認識しました。競合環境が変わったり商材が変わったりしても、営業としてやるべきことは大きくは変わらないということが見えてきたんです。それから、われわれのチームではハイパフォーマーに共通する営業活動の言語化と組織への浸透に取り組んでいます。
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