新幹線の名物アイス、カチカチ食感を生んだJRとスジャータの“固い”絆とは?:「固さ」に秘められた物語(1/2 ページ)
新幹線での移動の楽しみといえば、カチカチに凍ったアイスクリーム。通称「シンカンセンスゴイカタイアイス」としてSNSでもたびたび話題になる。この4月にはピスタチオ味が約2年ぶりに復活し、ファンの間で注目が集まる。車内での販売開始から約30年。あの食感と味はどのようにして誕生したのか。製造するスジャータめいらく(名古屋市)と、JRの担当者に話を聞いた。
新幹線での移動の楽しみといえば、カチカチに凍ったアイスクリームを思い浮かべる人も少なくないだろう。通称「シンカンセンスゴイカタイアイス」としてSNSでもたびたび話題になる人気商品だ。この4月にはピスタチオ味が約2年ぶりに復活し、ファンの間で注目が集まる。車内での販売開始から約30年。あの食感と味はどのようにして誕生したのか。製造するスジャータめいらく(名古屋市)と、JRの担当者に話を聞いた。
座席のテーブルにしばらく置いて、やわらかくなるのをじっと待つ――。SNSにはそんな様子を写した写真がたくさん投稿されている。「旅の思い出としてアイスの写真を撮ってくれる人が増えていて、大変うれしいです」とスジャータの担当者は話す。
新幹線のアイスクリーム、正式名「スジャータアイスクリーム」は、定番のバニラ・抹茶に加え、3つ目のフレーバーが期間限定商品として入れ替わる。車内販売を手がけるジェイアール東海パッセンジャーズ(東京都中央区、以下JR)によると、最も人気のバニラは、コロナ禍前の2019年1〜5月には合計30万個、1カ月あたり6万個が売れていたという。
コロナ禍の影響で直近の販売個数は1カ月あたり3.6万個と減っているが、車内販売では、お菓子やスイーツなどの分野で「断トツの人気」(JR担当者)を誇る商品だ。
コーヒーフレッシュから始まった縁
新幹線でスジャータのアイスクリームの車内販売が始まったのは91年頃。同社製を採用するきっかけは、そこから約13年前にさかのぼる。
東海道新幹線では、78年から車内販売で同社製のコーヒーフレッシュを採用していた。車内販売の全商品の中で、ホットコーヒーは最も売れる人気商品だ。コーヒーにほんのりと甘くまろやかな風味を付け足すスジャータのフレッシュは、新幹線のコーヒーに欠かせない商品として、長年親しまれてきた。
そんな縁から、JRとスジャータは新たに販売するアイスクリームでも協力することになった。日本の技術を結集した新幹線には「車内販売にふさわしいクオリティーの高いものを提供したい」という思いから、「スジャータの創業者で当時社長の日比孝吉氏が指揮し、より高品質なバニラアイスクリームを開発しました」とスジャータの担当者は話す。
アイスクリームといえば、人気のハーゲンダッツなどさまざまなブランドが存在する。しかし、約30年に渡ってスジャータ製にこだわる理由は何なのか。JRの担当者に聞いてみた。
――他にもアイスメーカーは数多くありますが、なぜスジャータ製を長く採用しているのでしょうか
「スジャータは、『新幹線のプレミアムな美味しいアイスクリーム』を一緒に作り上げてきた大切なパートナーであり、ピスタチオなどオリジナルフレーバーの共同開発などでも大きな信頼を寄せているためです」
関連記事
- 新幹線から富士山見やすく――JR東海、車内スペースを改良 狙いは?
JR東海は東海道新幹線の最新車両「N700S」を2023〜26年度にかけて、追加で19編成投入すると発表した。追加投入にあたり、車内スペースを一部改良。多目的室の窓の高さを変更し、車いす利用者がより景色を楽しめるようにする。改良の狙いを担当者に聞いた。 - 使いやすさより可愛さ! 台湾で立体型の交通系ICカードが大ヒットするワケ
改札機にかざすだけで列車に乗れ、店舗での買い物にも使える交通系ICカード。カードだから当然、フラットな形をしているが、お隣の台湾では少し事情が違う。フラットではなく、キャラクターなどをあしらった立体型のカードが主流だ。日本でいま話題のヤクルトや、森永のミルクキャラメルの箱を模したものなど、企業とコラボしたユニークなアイテムがそろう。いったい、なぜ作ったのか。そこには、日本企業にも参考になる、常識を覆すものづくりのアイデアと、確たる販売戦略があった。 - 「イケアのサメ」に「ニトリのネコ」家具大手ぬいぐるみ なぜ人気?
「イケアのサメ」に「ニトリのネコ」――。大手家具メーカーの”看板商品”とも言えるぬいぐるみの人気のわけを探る。 - 味の素“シンプルすぎる”レシピ 10年前に開発したメニューがいま大人気の訳
味の素が開発したレシピが「シンプルすぎる」と大きな話題を呼んでいる。豚ひき肉のかたまりをマヨネーズで味付けし、そのまま焼くだけ――。Webサイトにアクセスが集中し、一時パンクするほどの注目を集めたレシピは、2010年に開発したもの。なぜいま、反響を呼んでいるのか。開発した経緯などを担当者に聞いた。 - “ジョジョ立ち”マネキンが脚光 洋服の青山、お堅いイメージ脱する戦略とは?
大手紳士服店の「洋服の青山」がスーツを扱う“お堅い企業”からイメージチェンジを図っている。躍動感あふれるマネキンをショーウィンドウに展示して話題を集めているほか、ツイッターの公式アカウントは直近2年でフォロワー数を20万人以上増やしている。一体、どのような戦略を取っているのか。担当者に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.