新幹線の名物アイス、カチカチ食感を生んだJRとスジャータの“固い”絆とは?:「固さ」に秘められた物語(2/2 ページ)
新幹線での移動の楽しみといえば、カチカチに凍ったアイスクリーム。通称「シンカンセンスゴイカタイアイス」としてSNSでもたびたび話題になる。この4月にはピスタチオ味が約2年ぶりに復活し、ファンの間で注目が集まる。車内での販売開始から約30年。あの食感と味はどのようにして誕生したのか。製造するスジャータめいらく(名古屋市)と、JRの担当者に話を聞いた。
ハーゲンダッツを上回る濃厚さの正体とは?
JRとスジャータ、両者の固い絆から生まれた新幹線のアイスクリームだが、最も話題になるのが、その固さだ。購入直後は、スプーンが入らないほどで、食べるまでにしばらく待つ必要がある。この固さの秘密は何なのか。スジャータの担当者に聞いてみた。
――なぜここまで固くしているのでしょうか
「濃厚でしっとりとした食感を追求しているためです。オーバーランと呼ばれる“アイスクリーム中の空気の含有量”を抑えてアイスの密度を高めているため、一般的なアイスよりも溶けにくく、固くなっています」
空気含有量を低くし、密度を高めることで、「硬く」「ねっとりした重みのある味」が実現できるという。
アイスクリームは、乳固形分15%以上、うち乳脂肪分8%以上――と定義されている。この乳脂肪分が、濃厚さを決めるポイントとなるが、スジャータが作るアイスクリーム(バニラ味)は乳脂肪分が15.5%。高級アイスとして人気のハーゲンダッツ(バニラ味)の15.0%を上回っており、かなり濃厚であることが分かる。
車内販売時、JRはアイスクリームをドライアイスで保管している。「新幹線の車内販売用ワゴンにはスペースの都合上、冷凍設備が無いため」(JR担当者)というのが理由だが、ドライアイスを使うことで、より低温での保管が可能となり、おいしさをぎっしりと閉じ込めた状態で提供している。
手の熱で程よく溶かす専用スプーンも
SNSでの人気の高まりなどを受けて、JRでは21年7月からアイスクリームのオンラインショップ販売にも乗り出した。20年12月から車内販売で扱っている、手から伝わる体温でアイスクリームを程よく溶かすことができる専用のアルミスプーンをセットにして販売するなど、新しい食べ方を提示している。
おすすめの食べ方として、スジャータの担当者は「ホットコーヒーを少量かけて溶かしながら食べる方もいるようです」と話す。
移動中の車内から家族の団らんの場へと、その味を楽しめる場所が広がり、ますます認知度を高めている新幹線のアイスクリーム。おいしさがぎゅっと詰まったカチカチの食感は、JRとスジャータの固い絆に裏打ちされたものだった。
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