ドーミーインはビジネスホテルと呼べるのか 業界人を悩ます「くくり」問題:瀧澤信秋「ホテルの深層」(5/5 ページ)
宿泊施設には多様な種別がある。筆者は7年ほど前から“業態のボーダレス化”と指摘してきた。
『日本全国展開する「ドーミーイン」がご提供するのは、至るところに心配りを施した、わが家の感覚のビジネスホテル。』(公式サイトより)、というようにドーミーインは自らについて親しみを込めて“ビジネスホテル”と呼ぶ。
ドーミーインの運営会社である共立メンテナンス(東京都千代田区)の事業をさかのぼると、社員寮などがそのスタートだ。入居者が出張した際に泊まったビジネスホテルにも社員寮のような大浴場があったらいいのに。との声が、天然温泉大浴場付きのドーミーインを展開するきっかけという。そうした点からも、ビジネスパーソン・出張族がコアターゲットとの伝統があるのだろう。
とはいえ、実際に出向くとビジネスパーソンの姿はもちろん、観光客とおぼしきファミリー、カップルなど多層なゲスト構成を目にする。ドーミーインのような付加価値やデザイン性の高いホテルブランドから、前に紹介したようなビジネスホテルと呼ばれる違和感の声が出る傾向があるものの、やはりドーミーインは自らをビジネスホテルという。
ビジネスホテルというワードのパワーをひしひしと感じるドーミーインと、その呼称に違和感を抱く事業者。次回は現場の声やアンケート結果も含め考察していくことにする。
著者プロフィール
瀧澤信秋(たきざわ のぶあき/ホテル評論家 旅行作家)
一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。
日本を代表するホテル評論家として利用者目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。その忌憚なきホテル評論には定評がある。評論対象は宿泊施設が提供するサービスという視座から、ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、旅館、簡易宿所、レジャー(ラブ)ホテルなど多業態に渡る。テレビやラジオ、雑誌、新聞等メディアでの存在感も際立ち、膨大な宿泊経験という徹底した現場主義からの知見にポジティブ情報ばかりではなく、課題や問題点も指摘できる日本唯一のホテル評論家としてメディアからの信頼は厚い。
著書に「365日365ホテル」(マガジンハウス)、「最強のホテル100」(イースト・プレス)、「辛口評論家、星野リゾートへ泊まってみた」(光文社新書)などがある。
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