「フリーランス」の響きはいいけれど……驚くべき“脱法契約”の実態:働き方の「今」を知る(5/6 ページ)
「フリーランス」は、一見華やかな働き方に思える。しかし、その仕組みを悪用する企業が増加している。この記事では、悪意ある企業の手口を紹介し、フリーランスで働く人やこれからそうした働き方を検討する人がどのように身を守るべきかについて、ブラック企業を研究する新田龍氏が解説する。
フリーランスとして働くうえでの留意点
もちろん、だからといってフリーランスは不安定でリスクがあるからダメ、というわけではない。会社という枠組みに縛られることなく、自身の生活やメンタルを自律的にコントロールでき、自分の腕次第でどんどん稼ぎたい人にとってはまさに向いている働き方であるから、適性のある人にとってはチャレンジする価値は十分あるだろう。
業務委託契約そのものが問題なのではなく、契約形態を悪用する企業があることが問題なのだ。では、私たちがこのような悪意ある企業や手口を見抜き、避けるためにはどんな点に注意すればよいのだろうか。
一つは、そもそも、フリーランスの大前提は「個人事業主として、リスクをとる働き方」であることだ。そしてそのリスクとは、業務委託契約のため「会社と会社員を守る法律には一切守ってもらえない」こと。従って、自分の身は自分で守るしかないということになる。
業務委託契約は成果物に対して報酬が支払われるため、たとえ報酬に見合わないほどに労働時間を費やしてしまっても、受け取れる報酬は成果物に対するものだけだ。当然、時間管理も体調管理も自己責任となるし、「業務委託のほうが報酬が上がるよ」などと約束されても、保険料などの持ち出しも増えるし、いつその約束が反故(ほご)になるか分からないという不安定感と隣り合わせだ。それでもチャンスだと考えられるなら、一歩踏み出せばよいだろう。
もう一つは、発注元の指示命令に従わされ、実質的に従業員と変わらない「労働者性」のある委託業務に注意すること。
先述のトラブル事例のように、フリーランス案件の中には、業務委託契約なのに発注元の指揮監督下に置かれ、雇用労働者と何ら変わらない労働条件で働かされるものが混じっている可能性がある。委託業務に次のような条件があれば要注意だ。
(1)仕事自体の自由がない
- 発注元からの仕事依頼に対して、受ける/受けないの決定権がない
- 仕事依頼を断ると欠勤扱いとなり、報酬減額などのペナルティがある
- 他の発注者から仕事を受けることを制約される
(2)仕事の進め方の自由がない
- 仕事のやり方について細かい指示命令を受ける
- 受託した仕事の進捗状況や納品予定スケジュールについて、定例会議で都度確認される
(3)働く時間や場所の自由がない
- 勤務場所や出社時間を指定される
- 「周囲の社員に合わせてスーツ着用」など服装の指示がある
- 仕事の成果とは関係なく、作業時間に合わせて報酬が設定される
これらは「使用従属性」と呼ばれ、発注元が受託者に対してこのような労務管理をしている場合、「事実上の労働契約である」と判断される要素となる。
仮に使用従属性が認められた場合、発注元は業務委託契約ではなく、労働契約に基づいた対応をしなければならない。その際、契約は労働基準法の適用を受けることになるため、発注元企業に対して残業代や未払い賃金を請求することが可能となるのだ。
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