Suicaはライバルではない? クレカタッチで電車乗車を交通事業者が進めるワケ(4/5 ページ)
三井住友カードやビザ・ワールドワイド・ジャパンらが進める、公共交通機関向けのクレジットカードのタッチ決済対応。5月31日には福岡市地下鉄が対応し、6月1日には長良川鉄道、7月15日からは西日本鉄道が対応するなど、次々とエリアを拡大している。
速度という課題
一方で、交通系ICと比べた場合にはいくつかの課題もある。
1つが処理速度だ。Visaでは最長0.5秒の処理速度がルールだが、Suicaなど日本の交通系ICは0.2秒とさらに速い。今回の三井住友カードらの仕組みだと「0.35秒前後で、スマホだともう少し速い」(QUADRAC)という。
速度改善のためにさまざまな工夫もしている。クレジットカードの場合はネットワーク経由で与信判断をするオーソリケーションが必要で、この時間を待つとなると、自動改札機の前で乗客が滞留してしまう。そこで改札機ではカードの有効性確認だけ行い、オーソリを後から行うことで、入退場時の速度向上を図り、タッチしてすればすぐに入退場できる、という仕組みを実現した。
処理速度に関して、自動改札機メーカーの日本信号は、「立ち止まってタッチしなければならないほどではなく、利用者が慣れれば違和感がない」という判断だ。実際のところ、電波強度の問題で、リーダーに接近させたときにFeliCaが反応する距離よりもクレジットカードの方が近づけなければならないので、反応が鈍いと感じてしまう可能性はある。
ただ、大規模駅でもある南海電鉄なんば駅でも、自動改札機でのトラブルは起きていないとのことで、FeliCaのようにリーダーから少し浮かせてスルーするように通過しようとしなければ、速度的にも問題はないようだ。
特に、福岡市地下鉄の自動改札機は既存のものを改造して一体型としたため、リーダーからフラップまでに距離があり、通過するまでに多少の時間を稼いだ。この一体型自動改札機を製造した日本信号では、設置するリーダーの角度を入口・出口で変えることで、タッチしやすい角度を模索している。
それでも、1日47万人(2020年)という乗降客数を誇るJR新宿駅の朝のラッシュをこなせるかどうかは疑わしい。ちなみに福岡市地下鉄は路線全体の1日の乗車人数が47万人(19年)だ。
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