4年間で15%→36%に カプコンの営業利益率はなぜ急上昇したのか:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(5/7 ページ)
今回取り上げるのはカプコンです。モンスターハンターやバイオハザードなどの人気ゲームを提供している企業で、家庭用ゲーム機向けのゲームソフトをメインに提供しています。営業利益の推移を見ると、20年3月期は大きく伸びていて右肩上がりで成長を続けています。どうして利益率が伸びていたのでしょうか?
なぜデジタル化で旧作が売れる?
ではなぜ、デジタル化が進むと旧作タイトルが売れるようになるのでしょうか?
パッケージ版を店舗で販売する場合、店舗の売り場面積という制約がありますから、メーカー側からすると、そこには最も売りたい最新作を並べますし、売り場があったとしても旧作は当然顧客の目につきづらいところに並べますよね。売り場が確保しにくいということです。
ですが、旧作タイトルには需要がないのかというとそうではなく、これまでも中古ゲーム市場というのは大きな市場でした。つまり旧作タイトルの市場は、これまでは2次流通市場が補ってきたわけです。
デジタル化が進むと、当然商品棚という制約がありません。そのためデジタル化によって商品棚が大きく拡大したことで、旧作タイトル化が売れるようになったのです。
また、パッケージ版の場合、製造コストや配送コスト、販売コストがかかりますから、それを回収できる売り上げが見込めないとゲームの製造はできませんし、売値を下げるにも限界があります。販売コストが2000円かかるゲームを1000円では売れませんよね。
なので発売から時間がたって売り上げが落ちてくると、製造を止めるという判断をしなければいけないわけです。
一方でデジタル版の場合はそういったコストがかかりませんし、複製コストはゼロに近く、デジタル上の商品棚に並べて置くコストも非常に低いです。そのため長期的に販売が可能になります。
さらに、10億円の開発コストをかけたタイトルはいったんその10億円分の回収が終われば、それからの売り上げのほとんどが利益になります。つまり、時間の経過とともにメーカー側で大きく値下げをして旧作を売ることも可能だということです。
パッケージ版の中古ゲームと価格競争をして勝つことも可能ですから、今後のゲームの2次流通市場は、カプコンのようなメーカーに取って代わられる可能性もあります。
ということで、デジタル化の大きなプラス要因としては、過去タイトルの資産化が進むという点もあるわけです。
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