楽天経済圏、第2章 ポイントに続く武器、楽天キャッシュとは一体何か?:金融ディスラプション(2/4 ページ)
楽天の最大の強さは楽天経済圏だ。そしてその経済圏を支えるエンジンであり、潤滑油でもあるのが、年間5300億円も発行している楽天ポイントである。しかし、この度そこに新たな武器が加わる。オンライン電子マネーの「楽天キャッシュ」だ。
楽天経済圏の本質とは
まず、楽天経済圏とはいったい何かをおさらいしよう。楽天市場での買い物はもちろん、楽天の各サービスを使うと企業ポイントである楽天ポイントが付与される。このとき楽天のサービスを複数使うほど、ポイント還元率がアップする仕組み(SPU)になっている。楽天は、複数サービスを利用しているユーザーの比率を公開しているが、この比率は右肩上がりで伸び続けており、直近2022年1-3月は74.8%まで増加している。
楽天経済圏の中で、配布される楽天ポイントは年間5300億円以上。このとき重要な点は、楽天ポイントが使えるのは基本的に楽天の各種サービスだということだ。つまりユーザーは楽天ポイントを消費するために再び楽天のサービスを使うわけで、基本的には囲い込みのツールにあたる。
現在推進している楽天キャッシュも、基本的には目的は同様だ。「お得」に惹かれて楽天キャッシュを購入したら、それは楽天のサービスでしか使えない。ややこしい仕組みを使ってでも、楽天キャッシュにチャージさえしてもらえば、いずれ楽天のいずれかのサービスで使われるわけで、クロスユースを促進するとともに、いわば将来の売り上げが確保されたことにもなる。
楽天ポイントと楽天キャッシュの2軸で楽天経済圏強化
楽天ポイントは利用のインセンティブとして付与するもの。そして楽天キャッシュは、ユーザーが現金や各種資産を事前にチャージすることで、囲い込みを強化するもの。これが両輪となり、楽天経済圏をさらに強化しようとしている。
そのためには、さまざまな入り口から楽天キャッシュにチャージできることが重要だ。19年には楽天カードからのチャージと楽天銀行からのチャージを可能にし、21年には仮想通貨から楽天キャッシュにチャージできるようにもした。18年からはフリマサービスのラクマの売上金もチャージできる。
とにかく楽天キャッシュへのチャージの入り口を増やす。そのために、5月からは新たにコンビニなどで購入できる「楽天ギフトカード」の販売も開始した。さらにこの夏には、全国2万6000台のコンビニ内にあるセブン銀行ATMで、現金からの楽天キャッシュチャージも可能にする。
楽天カードを持たないユーザーに対しても、楽天キャッシュへのチャージを通じて楽天経済圏へ誘うのが狙いだ。
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