「DX人材の育成を任された」 人事部は何から取り組むべきか?:Q&A 総務・人事の相談所(2/3 ページ)
「社内のDX人材を育成したい」と経営者から言われました。今まで取り組んだ実績はありません。人事部として何から始めればいいでしょうか?
自社に必要なDX人材の見える化
経営環境の変化が激しい現代においては、経営や事業戦略を遂行できる人材基盤の構築が求められています。そのためにはまず、自社が求める人材要件を明確にすることが必要です。人材要件定義については、フレームワークを活用して人材タイプを割り出すとともに、ハイパフォーマー社員の分析やマネジメント層とのディスカッションを通じて固めていきます。
なお、ここで定義した人材要件は固定的なものではなく、時代の動向によって変化するものと考えられます。よって、求める人材像も経営課題に応じメンテナンスできるように設計しましょう。
設計した人材要件に社員を当てはめ、人材ポートフォリオを作成します。社員の適性を可視化することで、量と質の観点からどこにギャップがあるかを明らかにしていくためです。なお人材ポートフォリオの作成および人材ギャップの可視化に向けては、アセスメントの実施が有効な手段となるでしょう。アセスメントを用いることで、社員の現状のデジタル知識やスキルレベルの評価をするだけではなく、次世代のDXリーダーとなり得る適性のあるポテンシャル人材、つまり変化に対する感応度・受容度の高い人材を特定することが可能となります。
既存事業と新規事業でDX教育は大きく変わる
企業が直面する状況は、必要なスキルやその習得方法にも影響を与えます。例えば、既存業務の改善と新規事業の創造ではDX人材に求められるスキルが全く異なります。既存業務改善では、企業全体のDXの旗振り役として、現状業務分析から効率化の余地把握や、ノーコード/ローコードでの開発による業務改善の実行スキルが求められます。対して、新規事業の創造ではコア事業における更なるイノベーションの火付け役として、市場分析や企画力、高度な専門デジタルスキルが必要になるでしょう。また、スキル習得方法についても「スキルの新規習得(リスキリング)」「保有スキルの向上(スキルアップ)」の2種類に分けて定義できます。
新規事業の創造におけるコア事業のイノベーション追及や新規事業への転換が大きく求められる局面においては、新事業/製品の企画領域で最先端のデジタル技術などの高い専門性が求められます。一方で既存業務の改善においては、自社ビジネスへの深い知見や課題意識が必要ではあるものの、一般的なビジネススキルや汎用的なデジタル知見があれば着実に改善を進めることが可能です。やみくもにスキルアップやリスキリングに対して手を打つのではなく、自社のビジネス環境や戦略に応じて使い分けることが重要であるといえます。
また、実際にDX人材の育成に取り組む際には、単なるデジタルツールやアプリケーションのトレーニングだけではなく、DX時代のリーダー育成の観点から実践的なトレーニングを進めるべきです。研修で得た知識を現場で実践する際には、いわゆるデジタル知識だけではなく、コミュニケーション力や現場における推進力を持って、やり抜く力が必要です。
しかし、研修の場を終えて、いざ日常業務に戻ってみると、今までと変わらない環境の中で上述の推進力がどうしても欠けてしまいます。このような状況下では、アクションラーニングの形で、DXに対する豊富な知見やノウハウを有する、外部人材を活用するのも一つの手段です。それぞれの企業状況に応じて外部人材が伴走支援することで、社員一人ひとりがデジタルスキルの習得とやり抜く達成感を得ながら、具体的な効果の創出にコミットできます。
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