【独自】くら寿司元店長が語る労働環境 「休みは取れず、上司は壁をたたきながら……」(6/7 ページ)
くら寿司にアルバイトとして入社し、その後社員として店長まで勤め上げた元社員にインタビューを実施した。当時の働き方を聞くと、違法性が疑われる労働環境が明らかになった。くら寿司で何が起きているのか?
成長を継続している企業の場合、同質の価値観を持った人が集まりやすく、多少厳しい環境であっても疑問を抱かなかったり、事業成長による高揚感によって劣悪な労働環境をカバーできてしまったりする面があるのも事実だ。また体育会系的な組織風土の場合、疑念があっても声を上げづらい雰囲気もあるだろう。
これまで報道された事象は全て、被害者側の証言に依拠している。また、実際に何かしらの行政処分が下されたり、民事や刑事で告訴されたりしているわけではないため、会社側としては単なる「個人の感想」「一方的な誹謗中傷」と片付けることもできよう。
しかし、一連の報道について会社Webサイトの「お知らせ」欄でも一切言及されていない「完全無視」状態なのは懸念材料だ。同社の公式Twitterも初回報道以降の約2カ月間更新を停止しており、6月15日より更新を再開したが、報道への言及はなされていない。
【編集履歴:2022年6月22日11時30分 同社のTwitterの更新状況について、一部表現を改めました】
本来、このようなネガティブ報道対応の王道は、報道がなされていることに言及し、「世の中を騒がせた」点について取り急ぎ謝罪するとともに、すぐに報道内容にまつわる事実関係を調査することだ。そのうえで判明した事実を公表し、事実無根であればその旨堂々と発表すればよい。もし、違法な点や不適切な事象があったのであれば、真摯(しんし)に反省している姿勢を伝えたうえで、問題発生の原因、責任所在、今後の対応策などについて説明をする。
特に今般のケースは企業全体のイメージや評判に関わるものであるから、「一方の当事者」の責に帰することなく、「企業組織の問題」として、会社を挙げて取り組む姿勢を示すこともまた重要となるだろう。
これらについて、内部の従業員はどう捉えているのだろうか。あらためて、元店長に聞くと「公表した不祥事はほとんどが事実ではないかと思います。勤め始めたころに『何かおかしいな』『厳しすぎないか』などの違和感を覚えた方は多いと考えます。ただ、多い店舗では、1店あたり100人近くの勤務者がいます。『周りの人も普通に勤務しているから自分の思い違いだ』『くら寿司では、これが当たり前なんだ』と錯覚を起こしてしまい、これまでなかなか表沙汰にならなかったんだと思います」と話す。
また、本部の体制にも言及。大きな組織の中で、事態を把握できていない可能性もあるという。「本社の『事実無根』との回答には怒りを覚えます。隠蔽(いんぺい)しても何にも良いことにはなりません。しかし、現場の忙しさ・人員不足・体育会系といったところがあり、本部や上司に対して不祥事について言えない・言いづらい環境があることもまた確かで、本部が把握できていないことも多くあると思います」
今後くら寿司にはどのような対応を求めたいか尋ねると、このように答えてくれた。
「第三者の立場から正当に社内調査を行うべきだと思います。まずはしっかり調査を行うこと。記事に記載されていることは多少大げさに記載されているかもしれませんが、(似ていることは)事実として過去にも現在にも起きていることなので、非を認めて再発防止、会社改革を行うべきだと思います。会社の対応にはホントに怒りと不満と不信感しかありません。退職して正解だったと思います」
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