ターゲットはガチ勢! “本のホテル”4カ月でリピート率28%の秘密:3分インタビュー(2/3 ページ)
東京の神保町に、ユニークなホテルが登場した。ホテル名は「BOOK HOTEL 神保町」。建物にはたくさんの本が並んでいるが、なぜこのようなホテルを始めたのだろうか。運営をしているdot社の共同代表に話を聞いたところ……。
「書籍×ホテル」に着目
――コロナ禍、ホテル業界は苦戦しました。そんな状況の中で、「書籍×ホテル」に着目されたわけですか?
御子柴: はい。ただ、他のホテルでも本を置いているところがありますよね。そうしたホテルとどのような違いがあるのか。ひとことで言えば、“ガチ勢”をターゲットにしているのかどうかなんです。
ホテルに本を設置していても、こちらの質問にはなかなか答えてくれないですよね。例えば、近くにいるスタッフに「オススメの本を教えてください」と話しかけると、びっくりされるかもしれません。そのような質問をされるケースは少ないと思うので、うまく答えられなくても仕方がないですよね。しかし、「BOOK HOTEL 神保町」は違う。「読書漬けの体験」を提供しなければいけないので、スタッフが書籍に関して詳しくなければいけません。
「オススメの本を教えてください」と聞かれたら、きちんと対応しなければいけません。利用者の多くは、本が好きな“ガチ勢”なので、その人たちよりも詳しくなければいけません。というわけで、スタッフには「仕事中に本を読んでください。そして、その情報を発信してくださいね」と伝えています。
――「本を読むこと=仕事」になっているわけですね。ところで、ホテルのスタッフは何人いるのですか?
御子柴: 基本的にはワンオペですね。このような話をすると、「どうやって回しているのですか?」と聞かれることが多いのですが、答えはそれほど難しくありません。他のホテルの場合、レストランで食事を提供していたり、大浴場を設置していたり、送迎のサービスをしたり、アメニティーを充実させたり。たくさんのお客さまを確保するために、間口をどんどん広げている。一方、当ホテルの場合はどうか。本を置いているだけ。
というわけで、本をあまり読まない人にとって、このホテルは興味がわかないかもしれません。一方、本をたくさん読む人には、「どんなところなんだろう?」「一度、泊まってみようか?」などと感じてもらえるようなことをしなければいけません。その仕掛けは、誰がするのか。ホテルのスタッフになるので、彼ら彼女らには「とにかく読んでください。そして、その情報を発信してくださいね」と伝えています。
――具体的にどんなことをしているのでしょうか?
御子柴: 本に関するアンケートにお答えいただき、それに基づいて本を提案するといったサービスを始めました。また、お客さまの日頃の悩みや、解決したいことを30分ほどヒアリングして、最適な本を提案するサービスも始めました。具体的なアドバイスをするのではなく、答えを見つけるための手助けとなる本を提案できればいいなあと思っています。ちなみに、悩みで多いのは、会社での人間関係、お金、恋愛、健康などですね。
このほかにも、誕生日にまつわる本を提案したり、本と一緒に味わいたいモノを提供したり(コーヒーなど)。こうした取り組みをしたことで、稼働率はどうなったのか。スタート時はコロナの感染が広がっていたこともあって、3〜4割で推移していましたが、5月は70%を超えました。
また、オープンしてから4カ月後にリピート率を見ると、28%でした。新規のお客さまが増えるフェーズにもかかわらず、すでに3割近い数字が出ていることは、本好きの人の好奇心をうまく刺激することができたかなあと思っています。
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