「いつでも全力で走る」「オレの背中を見てくれ」 意識高い系“ブラック社長”の落とし穴:ブラック社長は4種類(3/4 ページ)
「オレはこの国の未来を輝かせたい」。出版関係の会社を経営するA社長は、この目的を達成するために本気で考え、本気で行動しています。A社長自身の理念を会社の理念とし、社員に対し熱く語ることで想いを浸透させてきました。長時間労働も、深夜残業も、休日労働も、激しい叱責も「すべては”日本の輝く未来のために”避けては通れない」という幻想を抱き、それをすべての社員が受け入れていると思いこんでいました。
ブラック企業を見抜くことはできるのか?
求職者がブラック企業かどうかを判断する際の情報源は「インターネットでの評判」が71.3%で第1位となっています。
ただし、インターネットの書き込み自体が本当の情報かどうかは分かりません。その会社の社員がなりすましでイメージがよくなるような書き込みをしているという話も聞いことがあります。また、最近では競争率を下げたい学生によるフェイクもあるそうです。
働く側の視点から、ブラック企業を見抜く方法をあげてみます。
ブラック率が低そうな会社を探す
「くるみん(次世代認定マーク)」や「Wマーク(安全衛生優良企業認定)」など、企業はさまざまな認定を取得しています。これは、ある一定の要件をクリアしている証ですので、認定されている企業は信頼がおけると考えてよいでしょう。たとえばWマークであれば、年次有給休暇消化率が70%の会社や、なかには100%なんて会社もあります。
これらを取得しているほとんどの企業は、自社のWEBサイトにマークを掲載しています。そのほか、健康経営優良法人に認定されている企業もあります。
本当の評判を聞く
OBやOGのほか、勤務経験のある知り合いに評判を聞いてみると確実です。なかには、退職の経緯に不満を持ち続けている人などは、会社のことを悪くいう人もいるでしょうが、インターネット上の情報よりは信頼できそうです。
確認するポイントは次のような項目です。
(1)サービス残業の有無
(2)月の残業時間の上限
(3)休申請のしやすさ
(4)社長の考え方
(5)会社のノリ
なかでも(4)(5)は重要です。
(4)の社長の考えと自身の考えが乖離している場合は、A社長のような法令違反は論外ですが、法令違反がなくとも働き続けることは難しいでしょう。そもそも社長の考えについていけないので、人事評価も上がらない可能性があるため、出世は難しいと考えられるからです。
また、(5)の会社のノリは特に重要です。ここが合わないと「飲み会や社員旅行がツライ」なんてことや「プライベートで付き合いたくない」と思っていても、全体的なノリに巻き込まれてしまいます。
たとえば、その会社の社風が「体育会系のノリ」なのは法令違反ではありません。行き過ぎてパワハラとなる可能性はあるかもしれませんが、単なる社風というだけではパワハラにはならないのです。
「私にとってみればブラック企業」かどうかの基準は、労働者自身にヒアリングする以外は判断しづらいものなのです。
面接で話題にする
思い切って、会社の面接で話題にしてしまうという方法もあります。離職率や残業時間(一番多い人)、休日出勤の平均的な日数、年休の消化率など、求職者が知りたい項目について面接担当者が回答するようにします。働く側からすると、誠意をもって答えてくれるかどうかも判断する基準となります。採用側は、あらかじめ労働環境をオープンにすることで、入社後のミスマッチを防止することができます。
ブラック企業の定義はそれぞれです。法令違反や倫理に反する企業は当然ブラック企業です。理由はどうであれ、それらは是正しなくてはなりません。ただ、社風や文化をブラック企業扱いされてしまう会社もあります。同じ会社であっても、人の感じ方によって「居心地のよい会社」になったり「ブラック企業」になったりするわけです。そこでミスマッチになると会社も社員も不幸になるだけです。企業は会社説明会や面接の場で「社長の考え」や「会社のノリ」を説明することによって、「私にとってのブラック企業」は生まれなくなるでしょう。
「自社の社員すら幸せにできない男が世の中を良くするなんてできない」
A社長も今では、「法令順守は当たり前、働き甲斐のある会社にして、輝く未来をみんなで実現したい」と方向転換をしています。ちなみに、深夜スタートの飲み会は「本当に希望者だけで行くようにしています」とのことでした。
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