楽天証券の楽天キャッシュ決済、積立額上限が合計10万円に増えたワケ:金融ディスラプション(2/2 ページ)
楽天証券が新たに開始した電子マネー楽天キャッシュを使った投資信託の積立サービス「楽天キャッシュ決済」。このサービスはどんな経緯でスタートしたのか? その狙いは何だったのか。
楽天キャッシュ決済とクレカ積立を合わせて月間10万円
こういった背景がある上で、楽天キャッシュ決済を見ると面白い。
「楽天キャッシュにはいろいろなチャージ方法があって、そうしてチャージした残高から使う形になる」(大津氏)からだ。銀行口座やATMを通じて現金をチャージできるのはもちろん、楽天のフリマサービス「ラクマ」の売上金を楽天キャッシュにチャージしたり、ビットコインなどの仮想通貨の売却額をチャージしたりすることもできる。楽天カードからのチャージも可能だが、それはチャージ方法の1つだという解釈だ。
これにより、金商法の例外としてのクレカ積立とは別に、楽天キャッシュを用いた投信積立が実現した。「無理のない投資となることを考えた上で、5万円を上限にした」(大津氏)形。これによって、従来のクレカ積立と合わせて10万円の積立が可能になったわけだ。
タンスの洋服も投資に回せる
クレジットカードから直接投信を買い付けるやり方に比べ、楽天キャッシュ決済ではより投資の幅が広がると、投信事業を担当するアセットビジネス事業部の山口佳子リーダーは話す。
「電子マネーには、クレカにはない“チャージ”ができることで、手軽なだけでなく汎用性がある。特に楽天キャッシュはチャージ元がたくさんあって、そこに世界が広がっている。部屋の中にある不用品がラクマを通じて必要な人の手に渡り、その売上金を楽天キャッシュにチャージすれば、そこから得られた資金で投資もできる。タンス預金のようにタンスに眠っている洋服も資産。不用品も投資に回せるようになる、という考え方も出てくるかも」
クレカ積立ユーザーからの移行も想定して、楽天キャッシュ決済の設定サイトも用意した。楽天カードからいったん楽天キャッシュにチャージし、それで投信を買い付けるということで複雑さを懸念する声もあったが、6月19日にオープンしたサイトの評判は上々のようだ(記事参照)。
初回楽天キャッシュ決済は7月12日までに設定すれば間に合う。しかし6月19日には想定以上のユーザーが登録を行い、楽天カードから楽天キャッシュに自動的にチャージを行う「残高キープチャージ」のシステムが一時止まるという出来事もあった。200万人のクレカ積立ユーザーは、どのくらいが継続し、また楽天キャッシュ決済に移行、そして併用するのか。楽天証券の発表が待たれるところだ。
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