わずか5日で売り切れ!「コペン20周年記念車」が示したスポーツカーの価値: 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/4 ページ)
ダイハツが発表したデビュー20周年記念の1000台限定のコペン特別仕様車。するとどうでしょう、あっという間に受注が1000台に達し、24日には受注終了となってしまいました。なんと発表から終了まで、たったの5日間。驚きの人気です。
豊田社長就任からスポーツカー復活
同じように近年のトヨタもスポーツカーに力を入れるメーカーのひとつといえます。現在のトップである豊田章男氏が就任したのは09年のこと。その時点では、トヨタのスポーツカーは、すっかり絶滅状態でした。
そこから豊田氏の下、12年に「86(現・GR86)」、19年に「GRスープラ」を復活させ、20年には「GRヤリス」を追加。気が付けば3モデルものスポーツカーをそろえるようになっています。それに伴いトヨタのイメージも、ずいぶんと変わったよう感じます。「壊れない」「コスパがよい」だけでなく、筆者的には「新しいことにチャレンジするメーカー」と見えるようにもなりました。
さらに、近年好調なマツダも、スポーツカーである「ロードスター」のイメージを上手に使っているメーカーといえるでしょう。マツダの「ロードスター」は、パワフルではないものの、「人馬一体」と呼ぶ、走りの楽しさで人気を集めています。その「人馬一体の走り」は、もともと「ロードスター」だけのキャッチフレーズでしたが、今ではマツダ車全体に使われるようになっています。なんとなく、マツダ車と聞けば、「ロードスター」のような軽快で気持ち良い走りをイメージさせるようになっているのです。これが、マツダのビジネスに好影響を与えていることは否定できません。
他にスバルもスポーツカーを上手に利用しています。それが「WRX」。強力なターボ・エンジンに4WDを組み合わせたコンパクトなセダンです。この「WRX」は特に米国の若者世代に根強いファン層が存在していると、スバルの開発陣は説明します。そして、「WRX」を卒業したユーザーが、「レガシィ」や「フォレスター」といった他車種に乗り換える流れがあるというのです。つまり、米国市場では「WRX」がスバルの入口となっているのです。そのため電動化が進む現状であっても「スバルとしてWRXをやめることはない」と断言していました。
関連記事
- マツダ・ロードスターが玄人受けする理由 マイナーチェンジで大絶賛
改良された「ロードスター」が、びっくりするほど好評です。試乗会を実施しました。そのレポートを見てみれば、どれもこれも好評、というか、ほぼ絶賛の嵐といった具合。いったい、そこにはどんな理由があるのでしょうか? - ロードスター990S 7年越しの回答
マツダのアイコンともいえるロードスター。マツダにとってはもちろんのこと、世界中のファンにとっても特別なクルマだ。2015年にデビューしたそのNDロードスターが大きく進化した。すでに評判はお聞き及びのことと思う。もはやちょっとしたお祭り騒ぎと言っても良い高評価である。一体何がどう変わったのか? - プレミアムって何だ? レクサスブランドについて考える
すでに昨年のことになるが、レクサスの新型NXに試乗してきた。レクサスは言うまでもなく、トヨタのプレミアムブランドである。そもそもプレミアムとは何か? 非常に聞こえが悪いのだが「中身以上の値段で売る」ことこそがプレミアムである。 - 新型86とBRZ スポーツカービジネスの最新トレンド
トヨタとスバルは、協業開発したFRスポーツカーとして、2012年からトヨタ86とスバルBRZを販売してきた。この2台のスポーツカーがこの度フルモデルチェンジを果たし、袖ケ浦フォレストレースウェイで、プロトタイプの試乗会が開催されたのだ。そこで86/BRZのインプレッションレポートと併せて、何がどう変わり、それがスポーツカービジネスをどのように変えていくかについて、まとめてみたい。 - 日産にZ旗を掲げた覚悟はあるか?
フェアレディZの復活で、自動車クラスターは大盛り上がり、それは喜ばしいことである。写真を見て、筆者もとても好意的に捉えたし、タイミングさえ間違えなければこれは売れるだろう。日産関連としては久方ぶりの朗報なのだが、ホッとしてはいられない。肝心の母体の調子がよろしくないのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.