コロナ保険が感染拡大で“実質破たん”……行政処分の事例から考えたい「ミニ保険不要論」:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
保険とテクノロジーを掛け合わせた「インシュアテック」を推進するjustInCaseが、6月27日付で業務改善命令を受けることとなった。一部では「ミニ保険不要論」なども噴出している状況だ。では、ミニ保険不要論とはどのようなものか。一般的な保険と合わせて検討していきたい。
保険は“宝くじ”と同じか
まず、ミニ保険不要論を検討する前に、「宝くじと保険は似ている」ということを確認しておこう。
宝くじは「バカにかかる税金」と呼ばれることがある。これは、宝くじの還元率が45%と、公営競技などと比較して圧倒的に低い期待値に設定されていることに由来する。
この還元率によれば、宝くじを1枚購入するたびに平均で55%損する計算になる。1枚300円のくじならば、購入するたびに165円を国庫に払っているということだ。宝くじが「バカにかかる税金」と呼ばれるのは、そのようなマイナスサムゲームにお金を投じることに経済的合理性がないからということだろう。
そして、同じように「期待値がマイナス」な金融商品といえば「保険」もそうだ。
私たちが保険会社に支払っている保険料の内訳は2種類ある。1つは保険金や満期・解約時の払い戻しに使われる「純保険料、もう1つが保険会社の営業員や事業経費に充てられる「付加保険料」だ。
付加保険料は保険金の支払いには使われない。つまり、保険料の総額よりも保険金の額が小さくなるため、保険商品の期待値はマイナスとなる。ただし、そうであるからといって全ての保険商品が不要というわけではない。特に対人・対物賠償の場面であったり、本人の病気や死亡といったケースでは、保険に加入していないがために一度の出来事で家計やライフプランが破綻してしまうケースがある。
貯蓄では到底まかなえない、数千万円や数億円のような規模の事故に備えて、一定のプレミアム(=付加保険料)を支払ってカバーすることに、保険の合理性があるといえる。
1等賞金が生涯年収を超える金額の宝くじが人気を博するのも、万が一当選すれば、小さな元手で一生分の稼ぎが入り、労働や不安などから解放されるからだ。期待値がマイナスでも試したくなる気持ちは分かるし、現に筆者もたまに宝くじを少額購入することもある。
さまざまな賞金帯の宝くじをリリースしている「totoスポーツくじ」の売り上げデータは、その性質を如実に表している。
一等賞金が最大6億円、12億円の「BIG」や「MEGA BIG」の売上金がそれぞれ492億円、253億円であるのに対し、一等当せん金額が1000万円の「BIG1000」や100万円の「mini BIG」はそれぞれ79億円、60億円と5分の1程度しか売り上げていない。
つまり、消費者は宝くじの期待値がマイナスであることは認識していながらも、万が一1等に当せんした場合、人生が一変する可能性が高ければプレミアムを支払ってでもくじを購入するという意思決定を下している。
1等当せん金額が貯蓄でも十分まかなえる金額の場合、期待値がマイナスの宝くじではなく、純粋に貯蓄した方が早くその金額を用意できる。期待値(還元率)が50%であれば、くじを買うよりも貯金のほうが2倍ほど早くその金額に到達できるのだ。
これを高額な生命保険や対人賠償責任保険に当てはめると、期待値がマイナスであっても私たちがこれらの保険に加入する理由が分かる。万が一保険事故が発生した場合に、人生がマイナス方向に一変するという事態に備えて、プレミアムを支払うということになる。
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