真っ白なジグソーパズルが、なぜ10年で22万個も売れているのか:週末に「へえ」な話(2/5 ページ)
何も描かれていないジグソーパズルをご存じだろうか。商品名は「宇宙パズル」。メーカーの「やのまん」が10年前から販売していて、ロングセラー商品として注目が集まっているのだ。それにしても、なぜこのような商品を開発したのか。担当者に話を聞いたところ……。
「モナリザ」が大ヒット
歴史といっても、商品を発売した10年ほど前の話ではない。時計の針を1974年まで巻き戻す。プロ野球の長嶋茂雄選手が引退した年に、何が起きていたのか。名画「モナリザ」が日本で初めて公開されるということで、ちょっとしたブームになっていたのだ。「やのまん」はそのことに目をつけて、欧州からモナリザのジグソーパズルを輸入して販売したところ、大ヒット。
当時、日本でジグソーパズルは普及していなかったが、そこにモナリザが登場したことで、新たな市場が生まれようとしていたのだ。会社として「これはいける!」と踏んで、二匹目のドジョウを狙った。欧州の建物やら風景などが描かれたモノを販売したものの、世の中はそれほど甘くはない。お客からは「なんで紙屑を売るんだ」といった声もあったそうで。
ジグソーパズルの黎明期ともいえるタイミングにもかかわらず、「やのまん」は翌年、社運を賭けた勝負に挑む。なんと、埼玉県に自社工場をつくったのだ。このような歴史を紹介すると、経営に詳しい人から「はあ? 行き当たりばったりでむちゃくちゃな会社だなあ」といった突っ込みが入りそうだが、実は同社には苦い経験があったのだ。
ジグソーパズルを発売する前、「やのまん」はどんな商いをしていたのか。創業時は国内の雑貨を海外に輸出していたが、1971年のニクソンショックを受けて為替相場は円高に。これをきっかけに輸出ではなく、輸入にチカラを入れる。
欧州で製造されていたミニカーを国内で販売して、人気を集めていたわけだが、競合他社が国内で生産することに。扱っていた商品は国産車で、しかも価格が安い。となれば、結果は明らかである。大打撃を受けて、新しい事業に打って出る必要があったのだ。
やや回りくどい説明になってしまったが、そこで白羽の矢が立ったのがジグソーパズルである。「ミニカーのような失敗は二度としたくない」という気持ちもあって、ジグソーパズルを国内で初めてつくることになったのだ。
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