投信積立、楽天キャッシュなら0.5%還元が継続可能な、そのカラクリ:金融ディスラプション(5/6 ページ)
楽天証券が新たに開始する楽天キャッシュ決済による積立は、なぜ0.5%を還元できるのか。将来はこちらも採算が合わなくなったという理由で、還元率が減る可能性があるのだろうか。クレカ積立の事業モデルをもとに、ここについて考えてみよう。
楽天キャッシュ決済の場合
やっと本題だ。では、楽天キャッシュ決済による投信積立の場合はどうか。ここでは、間に楽天キャッシュを提供する楽天Edy社が入り、お金の流れは4社間となる。
ユーザーの行動を追うと、まず楽天カードや楽天銀行から楽天キャッシュにチャージする。このとき、楽天カードの加盟店にあたるのは、楽天Edy社であり、加盟店手数料を支払うのも楽天Edy社だ。楽天キャッシュへのチャージでは、楽天カードは0.5%をポイント還元している。通常のショッピングの1%よりも低いわけだが、ここは楽天カードと楽天Edy社の間で手数料についても特別な契約が存在しているのだろう。
注目は、楽天キャッシュを使って投信を買い付ける部分だ。実は、楽天キャッシュを使った決済については、相手が楽天グループ内の企業の場合、手数料を発生させていない。つまり今回の仕組みにおいて、楽天証券側は基本的にコスト負担が発生しないわけだ。
楽天キャッシュは現在普及を推進している真っ最中にある(記事参照)。現時点では楽天キャッシュの認知を高め、楽天ポイントに次ぐ楽天経済圏強化の武器にしていきたい考えだ。実際、楽天キャッシュは「楽天ポイントと同様、グループのコアアセットという位置付け」(楽天Edy楽天キャッシュ事業推進室の鍋山隆人副室長)となっている。楽天のグループ内では、楽天ポイントの活用に手数料を支払う必要はないのと同様だ。
楽天キャッシュ決済の仕組みを改めて見ると、これによって楽天証券のコストは大きく減少することが分かる。
「今回楽天キャッシュは0.5%還元一律という形。ある程度、採算性としては、変更後のクレカ積立と大きく違わないとご理解いただいていい」と、楽天証券のアセットビジネス事業本部長の由井秀和常務執行役員は言う。
クレカ積立は、一部で還元率を下げるとはいえ楽天カードへの手数料が発生しているはずだ。採算性が同じということは、楽天キャッシュにおいても、わずかだが楽天Edy社あるいは楽天カードへの支払いが発生しているのかもしれない。それでも、現時点で無理のないコスト感となっているのは間違いない。
さらに、年末までは楽天キャッシュ決済で+0.5%の追加還元キャンペーンを行っているが、これを実施しているのも楽天キャッシュ側だ。楽天証券側はシステム構築とユーザー移行の促しくらいで、何らコストがかからない取り組みだともいえる。
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