美顔アプリで天下取ったMeitu、仮想通貨暴落で60億円の赤字:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/5 ページ)
画像SNSの成長とともに一世を風靡した美顔加工アプリの提供社「Meitu」が、22年上期の純損失が60億円に達するとの業績予想を発表した。赤字幅は前年同期の2倍〜3倍近くに拡大する見込み。背景には、投資した仮想通貨の暴落があり、批判の声が上がっている。
20年春にビットコインとイーサリアムを130億円分購入
Meituは21年3〜4月、ビットコイン940.89BTCとイーサリアム3万1000ETHをそれぞれ4950万ドル(約67億3200万円)と5050万ドル(約68億6800万円)で購入したと発表した。
同社は仮想通貨購入の理由を、資産形成に加え「ブロックチェーン業界に参入するための準備」と説明。中国では仮想通貨の取引が禁止されているが、Meituは登記上の本社をケイマン諸島に置いているからか(実質的な本社は中国本土にある)、現在まで中国当局から特段の反応はない。
蔡文勝CEOは当時、4000年前に最初に蟹を食べた人物を引用して、「後に続く企業が現れる」と強調した。
確かにMeituの仮想通貨購入は「中国に(実質的な)本社を置く企業として初めて」「上場企業がイーサリアムを購入するのは初めて」と、2つの「初」があったが、「最初に蟹を食べた人」に自身をなぞらえるのは大げさだろう。
なぜならその年の2月に米電気自動車のテスラがビットコインを15億ドル(約200億円)分購入し、相場上昇のペースを加速させていたからだ。Meituは「流れに乗って続いた」と表現する方がしっくりくる。
ともあれ、当時は強気相場真っ只中であり、仮想通貨購入発表直後にMeituの株価は上昇した。21年11月にビットコインは過去最高値の6.9万ドル(約940万円)、イーサリアムは4800ドル(約65万円)をつけた。
だが、仮想通貨は昨年末から下落トレンドに入り、特に今年5月末から下げが加速した。
Meituはやむなく保有する仮想通貨の価値目減り分に相当する計4560万ドル(約62億円)の減損処理を行い、7月3日に発表した。
関連記事
- 「歩いて稼げる」STEPN、崩壊論高まる 大物投資家のSNSが中国封鎖引き金か
現実世界で歩いた分だけお金が稼げる「STEPN」は、世界で200〜300万ユーザーを獲得した注目のブロックチェーンゲームだ。しかし5月末に中国ユーザーの規制が発表されると、ゲーム内のNFTやトークンの価値は数日で暴落。とはいえ中国当局に目をつけられないよう先手を打ち、うまく対処している。 - ビットコインは目の上のたんこぶ、人民銀幹部「暗号資産は投資商品」発言の真意
人民銀の幹部が4月18日デジタル資産について「投資商品」との見解を示した。仮想通貨交換所・コインベースの米国上場、ビットコインの値上がりも重なり、中国でも仮想通貨“解禁”への期待が高まっている。しかし仮想通貨取引・利用を全面禁止している中国政府が、デジタル人民元以外のデジタル通貨を許容することは当面なさそうだ - 中国テンセント、51%減益でも「ゲーム規制」及ばぬ海外投資に勝機
中国IT大手のテンセント(騰訊)が5月18日、2022年1-3月期の決算を発表した。純利益は234億元(約4500億円)で、国際会計基準での最終減益は10四半期ぶり。中国政府の各種規制が収益を圧迫し、新型コロナウイルスの再流行が追い打ちをかけた。しかしゲーム事業には好転の兆しが見える。 - 中国デジタル人民元“最新事情”〜当面のライバルはアリペイとWeChat Pay
中国デジタル人民元の最新実証実験が、10月18日に終了した。デジタル通貨分野では他国に1年以上先行する中国が、いち早く舵を切ってきた動機は実は国内事情にある。ここでは世界のデジタル通貨事情とともに、中国の現状と構想を紹介したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.