Sansanの営業はなぜ「専門スキルより、汎用的なセールススキルの習得」を重視するのか:先駆者たちの「セールスイネーブルメント」(3/3 ページ)
Sansanは2018年に「営業1人当たりの受注金額向上」を目標に営業組織の教育に力を入れ始めた。現在、営業メンバーが増える中でオンボーディングにかかる期間を半減させることに成功したという。どのような取り組みをしているかというと……
プロダクトの進化とともに、営業人材も進化させる
──これまでに直面した壁や大変だったことはありましたか?
そうですね。コンテンツや教育プログラムで使用する共通言語を作るのが難しかったです。ニュアンスは決められても、言語化するにあたり、一字一句レベルで「どのような表現がいいのか」は、時間をかけて検討しました。
例えば、先ほど説明した9つの営業スキルを言語化した「3×3(Sansan)セールススキル」をまとめる際も、現場マネージャやメンバーとの共通認識を作ることがが最も大変でしたね。
私たちだけで勝手に資料を作成しても結果1人歩きしてしまいかねないので、慎重に進めなければなりませんでした。
──セールスイネーブルメント組織について。Sansanにとっては新たな取り組みだと思いますが、他部署からはどのような印象を持たれていると感じますか?
現在は月に1回、各部の部門責任者に対して、「今月は〇〇をやりました」「その結果〇〇につながりました」と取り組みをレポーティングする機会を設定。そこで他部署のメンバーとお互いの業務について細やかな情報交換をするようにしています。
それもあり、他部署のメンバーからの積極的な協力体制を得られているのではないかと思います。
──組織を発足し成立させるためには、現場やマネージャの理解は肝になりそうですね。実際にメンバーからはどのような声があるのでしょうか?
マネージャからは、OJTが効率的になったと言われます。共通言語やフレームワークを作成したことで、OJTでフィードバックしやすくなったそうです。現場からは「〇〇をコンテンツ化してほしい」との声をたくさんもらっていますね。
現場からの声は大事だと思う一方、「それは全体にどのくらいのインパクトを与える改善につながるのか?」「今優先して取り組むべきことなのか?」についても考えています。必ずしも、戦略上の課題と現場が困っていることが一致しないなかで、どこに集中して対応していくのか。常に迷いながら、意思決定しています。
──最後に、今後の展望について教えてください。
プロダクトの進化はもちろん大事ですが、セールスもそれに向けて進化をし続けなければいけません。引き続き、営業生産性をより上げていけるよう努力していければと思います。
また、営業の経験・ノウハウを属人化させず、汎用性・再現性のあるセールスナレッジとして社内に浸透させることで、営業組織の継続的な成長を実現させていきたいと考えています。
著者:大矢剛大(ブレーンバディ代表取締役)
大学卒業後、新卒で入社した株式会社マイナビを経て、株式会社リクルートキャリア(現:株式会社リクルート)に転職。リクルートキャリアでは、最優秀新人賞、MVP、アワードなど複数受賞。また、自組織から表彰者も多数輩出させた。その後、HRスタートアップに事業責任者として創業から携わり、事業立ち上げや営業組織の構築を行う。2020年に独立し、複数企業の営業コンサルティングを行う。
2021年4月に本格的にセールス・イネーブルメント事業を行うべく株式会社ブレーンバディを設立。代表取締役に就任。
Twitter:@YoshihiroOya
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